これは銀行に勤める友人から聞いた話です。友人の支店には必ず毎月1回、めんどくさいクレーマーが来店されるそう。「今月もそろそろ、あの人がやってくる……」そんなとき、ある意外な展開になった出来事を紹介します。

有名なクレーマー

当時、私の勤めていた支店には月に1回だいたい月末付近になると、「めんどくさい」と有名なクレーマーのお客様がご来店されていました。重箱の隅をつつくような質問から、「それ銀行員の仕事じゃなくない?」とツッコみたくなる要求まで、とにかく対応に一苦労。

嫌味のオンパレード

たとえば、「隣にある〇〇銀行はここまでしてくれるのに」「今日は前回よりだいぶ待たされたわ」「そんな説明されたことなんて1度もないし、覚えてないわよ」「これから上がる株の話もわからないのね」など、嫌味のオンパレード……。そしてとにかく話が長く、2時間以上居座ることも。接客をできる限り、長引かせようとしてくるのです。

先輩の謎

窓口担当者は全員「対応したくないな、イヤだな……」というのが本音。とはいえ、大切なお客様であることに違いないので、丁寧な対応を心がけていました。そんなとき、「あの先輩だけ、対応したことがないのでは」と、気がついてしまった私。さっそく、先輩の動向をこっそりと観察してみることに――。

すると、先輩は例のお客様が来店すると必ずトイレに退散し、窓口から意図的に離れている事実が発覚!「うまく逃れられて羨ましいな」と思いましたが、後輩という立場では注意もできません。

あのクレーマーが今月もご来店

ところがある日、「ねぇ、気がついちゃったのよ。私を全然対応していない人がいるってことにね。せっかくだから、今日はあの人に担当をお願いするわ」と、あのクレーマーから先輩をまさかのご指名。指名された先輩はトイレに逃げられず、しぶしぶ長時間の対応をするはめに……。

行員同士よりも、お客様のほうが鋭く観察しているなと感心してしまったエピソードです。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2023年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:島田歩実
元銀行員として、女性のキャリアやお金にまつわるあれこれを執筆中。アメリカへの留学経験もあり、そこで日本社会を外から観察できたこともライターとしての糧となる。現在はSNSなどを介してユーザーと繋がり、現代女性の声を収集中。