最後のお別れ
私は看護師として、日々前向きに仕事に取り組んでいました。しかし、あまりの忙しさから、一人ひとりの患者さんと向き合う時間が足りず、「このままでいいのだろうか」と悩んでいました。
そんなある日、普段から仲良くしており、特に思い入れが強かった患者さんを見送ることに……。「泣いちゃいけない」と思いつつも、悲しみで胸はいっぱい――。私の病院ではお見送りの準備は看護師の担当だったので、どんなに忙しくても、最後までしっかり対応しようと精一杯頑張りました。
まるで眠っているみたい
そしてお見送りの準備が完了し、再び病室に患者さんのご家族を呼ぶことに。「元気だった頃のようだわ」「ただ寝ているだけみたい」と、何度も何度も何度も感謝の気持ちを伝えてくださいました。患者さんの表情は穏やかで、まるで本当に眠っているようでした。
スーパーからの帰り道
その日の業務を終えた後は、スーパーに立ち寄り、できあいのお惣菜を購入。「今日も1日頑張ったもんね〜。手抜きしたっていいよね!」と、レジ袋を片手に家路を急いでいるときでした。
「ありがとうね」どこからともなく、ハッキリと声が聞こえたのです! 「……え?」驚いて後ろを振り返るも、もちろん周りには誰もいません。そしてあの声は間違いなく、「今日天国へお見送りした患者さんの声」だったのです。
天国からのサプライズ
「長年看護師をしているとね、不思議なサプライズを経験するのよねぇ〜。いつかあなたも経験するかもしれないよ」という、新米ナースだった頃に先輩から聞いた話がふわっとよみがえります。「私もついにかぁ」天国から伝えてくれた患者さんの「ありがとう」を胸に、明日も頑張ろうと思えたエピソードです。
【体験者:40代・女性看護師、回答時期:2023年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:島田歩実
元銀行員として、女性のキャリアやお金にまつわるあれこれを執筆中。アメリカへの留学経験もあり、そこで日本社会を外から観察できたこともライターとしての糧となる。現在はSNSなどを介してユーザーと繋がり、現代女性の声を収集中。