楽しい時間の終わりほど、油断が生まれるもの。ほんの一瞬のスキが、冷や汗の出るアクシデントを招いてしまいます。今回は筆者本人が体験した、忘れられない磯釣りでのヒヤリとしたエピソードを紹介します。

家族で楽しんだ磯釣り

その日は朝からよく晴れて波も穏やかで、絶好の釣り日和。私たち家族は、磯釣り用の道具を積んで海へ行きました。当時小学1年生だった三男は、とにかく元気いっぱい。海に落ちないように目を光らせながらも、魚が釣れるたびに歓声が上がり、笑いの絶えない1日でした。釣果も上々。「今日は大漁だね!」と笑いながら、家族全員が満足そうな表情を浮かべていました。

ほんの一瞬のスキ

お昼も過ぎたので、そろそろ帰り支度を始めることに。特に大きなトラブルもなく、三男も楽しそうに笑っていて、「無事に終われそう」と胸をなでおろしていました。

私と夫は釣った魚や荷物を車へ運ぶため、ほんの数秒、三男の姿が視界から外れたそのとき。「ギャーッ!」甲高い叫び声が響きました。振り向くと、三男が泣き叫び、そばにいた四男は顔を真っ青にして固まっています。

慌てて駆け寄ると、その光景に息を飲みました。釣り竿の糸の先についた針が、三男の顎に深く刺さっていたのです!

簡単に抜けない釣り針

私たちが車に荷物を運んでいるわずかな間に、三男は好奇心から釣り竿を手に取って振り回した拍子に針が刺さってしまったようでした。釣り針には「かえし」と呼ばれるものがあり、刺さると簡単には抜けません。

糸を切り、急いで車を走らせました。後部座席の三男は泣き疲れ、次第に眠ってしまいましたが、私の手は震えっぱなし。頭の中で「どうしよう」「早く病院に着いて」と、そればかりがグルグル回っていました。

張り詰めた空気の中、医師の一言は

病院に駆け込むと、医師が一目見て驚いたように言いました。「これは……なかなか大物が釣れたね!」一瞬、張り詰めていた空気がふっと緩み、看護師さんも「次は魚にしようね~」と笑いながら三男の手を握ってくれました。処置は想像よりもあっけなく、ペンチのような器具で返しの部分をカット。そのままスッと引き抜かれたのです。

三男は痛みと恐怖で大泣きしましたが、針が抜けたとわかると安心したようにさらに大きな声で泣いていました。医師は最後に「お父さんお母さんの言うこと、ちゃんと聞くんだよ」と優しく声をかけ、消毒と化膿止めの薬を出してくれました。

「楽しい」の裏にある危険

家に帰ったあとも、三男はしばらく釣り道具を怖がって近づこうとしませんでした。

子どもの「ちょっと触ってみたい」という好奇心は、時に大きなケガに繋がります。いくら注意していても、一瞬のスキが命取りになることを痛感しました。釣りは自然と触れ合える素敵なレジャーです。だからこそ、大人が最後まで責任を持って道具を管理する――その大切さを、改めて教えられた1日でした。

【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。