お祝いムードと課長の冷たい一言
事務担当者が15名ほど在籍する私たちの部署で、2人の同僚が3月から同じタイミングで産休に入ることになりました。
女性社員や出産経験者も多く、みんな「おめでとう!」「楽しみだね!」と笑顔で祝福し、和やかな空気が広がっていました。
ところが、課長がふと漏らしたひと言で一変。「3月に2人って……うちの決算3月で忙しいのに。他の部署からどう思われるかな……」と苦笑交じりに言い放ったのです。その場の空気がピタリと止まり、せっかくのお祝いムードが一瞬で凍りつきました。
じわりと広がるモヤモヤ
確かに決算期の忙しさは事実です。でも、妊娠や出産のタイミングは自分の思いどおりにできるものではありません。
ましてやおめでたい報告の場で、上司からそんな言葉を聞かされると、なんとも言えない後味。
誰もが「今ここでそれ言う?」と思いながらも口を閉ざし、会議室には気まずい沈黙が流れました。課長は冗談っぽく言っていましたが、「困ったなぁ」という顔で天井を見上げる姿が、なんとも意地悪に感じられました。
先輩の神対応で空気が一転
そのとき、沈黙を破ったのは先輩社員。ニコッと笑って、「子どもがどんどん減ってる世の中で、うちのグループから国民が2人も生まれるって、きっとめちゃくちゃいい部署だと思われてますよね!」と明るく言い放ったのです。
思いもよらない一言にみんなが一瞬顔を見合わせ、次の瞬間、「ほんとだ!」という共感の笑いがドッと広がりました。
課長は言葉を失い、気まずそうに笑って視線を落とします。その姿が、まるで「しまった」と反省しているようで、なんともスカッとした瞬間でした。
言葉ひとつで変わる職場の空気
先輩のユーモアのおかげで、重かった空気は一気にやわらぎ、部署全体が「産休に専念してもらって仕事はみんなで支え合おう」という前向きなムードに。「子どもが生まれることは部署にも社会にもプラス」という視点をもたらしてくれたことで、皆が笑顔に戻れたのです。
職場の環境を良くするのは、時に厳しい視点よりもユーモアと温かさなのだと感じた出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2023年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。