長年の夢が叶った時やとても嬉しいことがあった時。顔がにやけてしまうのを止められないという経験は、誰しも一度や二度はあるのではないでしょうか。幸せな瞬間ではありますが、節度が大事なのも事実。今回は、脱毛サロンで働く私が体験したお話です。
結婚話が止まらない後輩
脱毛サロンで一緒に働く後輩は、明るく元気な新婚さん。誰とでもすぐに打ち解け、最近結婚したことや、楽しみにしているハネムーンの話をお客様にもよくしていました。
けれど、中には静かに施術を受けたい方や、結婚の話題が苦手な方もいます。
店長から「言動には気をつけて」と注意を受け、しばらくは天気や食べ物などの無難な話題に切り替えていたのですが……。
言ったそばから
ある日、昼休憩にスタッフ全員でハネムーン特集のテレビを観て盛り上がり、店長から「午後は気を引き締めて」と一喝。後輩も真剣な表情でうなずいていたのですが、午後一番のお客様の施術後、泣きそうな顔で戻ってきました。
「私、やらかしちゃったかもしれません……」施術中、ついまた結婚の話をしてしまい、途中からお客様が無言になってしまったと言うのです。
お客様へ謝罪
会計時に店長と後輩で一緒に謝罪しましたが、お客様は「いえいえ、途中から寝てしまっていたんです」と言ってくれました。それが本心かどうか不安は残りましたが、無事にご退店。
後輩は再び店長に注意を受け、そのまま次のお客様に向けて清掃へ。ところがすぐに戻ってきて「来てください!」と店長を引っ張ります。
タオルで祝福
施術室に入ると、そこにはタオルで作られた白鳥とハートの立派なアートが。なんと先ほどのお客様は有名ホテルに勤務されており、後輩の結婚祝いにサプライズで残してくださったのです。
お客様は本当に眠っていただけで、むしろ温かい心遣いを示してくれていたのでした。
その日以来、後輩は会話に節度を持ちながらも、笑顔を忘れず施術ができるようになりました。
後輩の「やらかしてしまった」という後悔と不安は、思いがけないお客様の優しさで心温まる結末となったのです。そして、目にしたスタッフ全員を温かい気持ちにしてくれました。
施術の場はお客様にとって大切な時間。節度を守りつつも、心を込めた接客は必ず伝わる――そんな学びを後輩から改めて感じた出来事でした。
【体験者:30代・女性・会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。