学生時代の一大イベント、修学旅行。古いホテルでの幽霊話、男子生徒のいたずら電話――ありふれた修学旅行あるあるが、奇跡にも思える偶然を起こして……? これは、中学教諭をしている友人の実体験です。
いたずら電話
私は中学校で教師をしています。これは新米教師の頃、修学旅行で体験した話です。
宿泊先は、幽霊の目撃談が数多く寄せられている古いホテル。各部屋には内線電話があり、部屋番号を押せば通話できる仕組みです。
そして、それを使って男子生徒が女子部屋などにかける“いたずら電話”は、毎年の悩みの種でした。
翌日にも鳴り響く着信音
旅行最終日の前夜、ある男子グループが罰ゲームで私の部屋に電話をかけ、学年主任にこっぴどく叱られました。しかし、私は内心幽霊ではなかったことに胸をなでおろしていました。
ところが翌朝、また同じ部屋番号から私の部屋に入電が……。たまたまその場には主任や他の教師たちも集まっていて、主任が受話器をとりました。電話口は無言。
「いい加減にしなさい!」と叱ると、コソコソした声が聞こえてすぐに切れたのです。
幽霊の仕業?
昨日あれだけ叱られて、すっかり反省した様子だった男子生徒が、またかけるだろうか。私も他の教師たちも「幽霊かも……」と目を合わせました。
ところが主任は大激怒。「現行犯でつかまえる!」とばかりに男子部屋へ走りだし、私も後を追いました。すると部屋のドアは開いていて、のぞくとそこには意外な人物の姿があったのです。
命を救ったリダイアル
中でうずくまっていたのは、なんとホテルの清掃員。
持病の発作を起こし、必死に電話まで這って助けを呼ぼうとしたものの、押せたのは「リダイアル」だけ。その番号が、偶然にも昨夜いたずら電話をかけた私の部屋だったのです。
主任がすぐに救急車を呼び、清掃員は一命をとりとめました。もし私が受話器を取っていたら、すぐに駆けつけることはしなかったかもしれません。
また、通常リダイアルはフロントに繋がることがほとんどで、学校側は生徒部屋からの電話には対応しないよう、ホテルにお願いしています。もしいたずら電話がなく、通常通りリダイアルでフロントに繋がっていても、対応はされなかったことでしょう。
いたずら電話は許されないけれど、その履歴と主任の判断が、一つの命を救ったのでした。
【体験者:40代・女性・公務員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。