愛犬や愛猫が飼い主を救った、というエピソードは耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。言葉は話せなくても、愛情は通じるもの。今回は私が体験した、息子が大切に育てているある“家族”にまつわるお話です。
虫嫌いの母親と虫大好きな息子
当時小学生だった息子は、とにかく虫取りが大好きな少年でした。特にカブトムシを捕まえると目を輝かせ、大切に育てていました。
しかし、私は大の虫嫌い。家の中での飼育は断固拒否し、「ベランダならいいわよ」と条件付きで許可を出しました。
息子もその約束を守り、ベランダで毎日楽しそうに世話をしています。
深夜の羽音
ある夏の夜、私は突然の羽音で目を覚ましました。部屋の明かりをつけると、なんとカブトムシが部屋を飛び回っていたのです。
大慌てで「約束を破ったのね!」と腹を立て、真夜中でしたが息子の部屋に注意しに向かいました。ところが、そこで見た光景は想像もしないものだったのです。
命を救ったのは
なんと息子は胸を押さえて苦しみ、尋常ではない痛みに顔を歪めていました。私はすぐに救急車を呼び、息子は病院へ搬送。診断結果は「気胸」。肺から空気が漏れ、呼吸ができない危険な状態だったのです。
その後の迅速な処置で事なきを得ましたが、もし羽音で目を覚ましていなかったら……と思うと、背筋が冷たくなったのを今でも鮮明に覚えています。
カブトムシの恩返し
病院から帰宅後、私はベランダを確認しました。すると虫かごはいつも通りすべてベランダにあり、施錠もきちんとされていました。夏休み中で家にいたのは息子と私だけ。息子も「ちゃんとベランダに置いた」と主張し、うそをついている様子はありません。
あの夜、なぜ部屋にカブトムシが飛んでいたのかはいまだに謎です。けれども、その“不思議な訪問者”のおかげで息子の命が救われたのだと思うと、偶然以上の力を感じずにはいられません。
毎日汗だくになりながら一生懸命カブトムシのお世話をしていた息子。その愛情がカブトムシにも伝わったのかもしれません。
【体験者:40代・女性・専業主婦、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。