妊娠中のつわりはつらく苦しいもの。特に仕事をしていると、思うようにいかない体調と周囲への申し訳なさで悩む女性も多いのではないでしょうか。今回は、私自身が目撃したある上司の無理解な発言にまつわるエピソードです。

妊娠による体調不良

私の先輩であるサキさん(仮名・30歳)は当時、2人目のお子さんを妊娠中。サキさんは初産のときも重いつわりに苦しみ通院するほどでしたが、それでも無理をして勤務を続けました。

そして、2人目の妊娠ではさらに体調が悪化。医師の勧めもあって3か月間の在宅勤務に切り替えることになりました。
それでも彼女は事務作業やオンライン会議をこなし、仕事を途切れさせることはありませんでした。

上司の心ない一言

周囲の同僚たちは「無理しないでね」「在宅でも助かってるよ」とサキさんに温かい言葉をかけていましたが、男性上司(30代後半・3人の子持ち)だけは違いました。

ある日の雑談で、彼から衝撃の一言が。

「サキさんにはほんと困ったもんだよね。そんなにつわりが酷いってわかってたなら妊娠なんてしなきゃいいのに」

吐き捨てるような言い方に「本当に3人のお子さんがいる人の発言……?」と周囲の空気も凍ります。
思わず私は「奥様は妊娠中の体調不良はなかったんですか?」と聞きましたが、彼は胸を張って「うちの奥さんは頑張り屋だからちゃんと働いてたよ」と言い切ったのです。

サキさんの人望と周りのメンバーのフォロー

すると、その場に居合わせた先輩が「みんなが頑張っても同じように働けるとは限らない。妊娠は人によって全然違うんだよ」と、すかさずピシャリ。他の同僚たちも次々と加勢しました。

「在宅でもサキさんは大きな戦力」「いつも助けてもらっている」と口々にフォローが入ると、上司の表情はみるみる困惑へと変わり、居心地悪そうに目を伏せて黙ったのです。

一体感を得た職場

その日以降、上司はサキさんのことをとやかく言わなくなりました。そればかりか、あのときの自信満々な態度が嘘のように、体調を気遣ったり業務量の調整をしたりと反省を行動に移してくれたのです。

後日、サキさんも「みんながわかってくれて嬉しい」と笑顔を見せてくれ、職場は以前よりも温かな一体感が生まれました。上司の不要な一言は、チームの結束を深める結果となったのです。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2022年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。