喧嘩の仲裁が得意な方は少ないかと思いますが、中でもお客様同士の仲裁ともなると、難易度は一気に高まります……。今回は、脱毛サロンで働く私が体験したお客様同士の口喧嘩にまつわるエピソードです。

同室待機のリクエスト

私が働く脱毛サロンでは、希望があれば待合室ではなく施術室で一緒に待機することができます。中学生など若めのお客様に多いリクエストで、ときにはご友人同士が希望されることもあります。

そんなある日、13時にA様、14時にB様のご予約があり、B様から「Aの施術中に同室で待ちたい」とリクエストがありました。

仲良しトークから一転

施術を受けながら、A様とB様はルームシェア中だと話してくれました。他愛のない会話が続き、和やかな空気が流れていたのですが、やがて「Aがヘアアイロンを毎回出しっぱなし」「冷めるまで待っているだけ」と、ほんの些細なことから口論へ。

二人は徐々に熱を帯び、かなり険悪なムードに発展。さらに「〇〇さん(私)はどっちが悪いと思いますか!?」と意見を求められ、私は返答に困ってしまいました。

緊張を断ち切った通知音

どちらも大切な常連のお客様で、どちらの肩も持てない——。
困り果てていると、A様のスマホから通知音が鳴りました。A様が画面を見て「待って、元カレから連絡来たんだけど!」と驚き、B様も「え、あの3年前の!?」と目を丸くします。途端に二人は元カレ話で大盛り上がり。

さっきまでの不穏な空気はどこへやら。施術室の空気は一気に和み、私はA様の施術から清掃、そしてB様の施術まで無事に終えることができました。

忘れられたケンカ

後日、A様がお一人で来店された際、「熱いまま入れられるヘアアイロンケースがあるみたいですよ」と私が話すと、A様は不思議そうな顔をして首をかしげました。どうやらすっかりあの日の口論を忘れていたようです。

ちなみに、元カレとは復縁しなかったそうです。あの絶妙なタイミングで連絡をくれた元カレに、思わず感謝してしまった出来事でした。

【体験者:30代・女性・会社員、回答時期:2025年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。