保険会社で勤務していた頃、体育会系のノリが強い部署に私は配属されました。連日の残業とその後の食事会に疲弊するなかで、1人の先輩が機転をきかせてくれ……!? 今回は、忘れられない夜のエピソードです。

体育会系の部署に配属

私が配属された部署は、毎晩のように22時近くまで残業が続いていました。その後はみんなでラーメン屋や居酒屋へ行くのが日課のようになっており、新人だった私は部署に早くなじみたい気持ちもあり、誘われれば必ず参加していました。
「先輩方から学ぶことも多いし、これも仕事のうちだ」と気を張っていたのです。

本音と現実のギャップ

しかし、本心では疲れ切った体を早く休めたかったし、実家で母が作ってくれる温かい晩御飯を食べたい気持ちもありました。しかし、「ノリが悪いな」「付き合いも仕事のうちだぞ」と言われると断りづらいのが現実。
部署のメンバーと仲良くなりたい気持ちはあれど、頻度が多く心身ともに疲弊していました。

勇気を出した拒否

ある日、ついに私は勇気を出して上司に伝えました。「今日は母に“家でご飯を食べる”と約束してきたので、ラーメンはパスして帰ります!」と。
ところが、上司は笑いながらひと言。

「そんなもん『娘さんはラーメン食べて帰ります』って俺がお母さんに今電話してやるよ」

冗談のつもりかもしれませんが、私は返事に困ってしまい場の空気が凍りかける事態に。

先輩の機転と救い

そのとき、隣で聞いていた先輩のリサさん(仮名・30代)が明るく割って入ってくれたのです。

「私がお母さんだったら、せっかく娘の好物を作って待ってるのに上司からそんなこと言われたら『そんな会社辞めちゃいな!』って思いますよ! 大事な後輩が辞めたら困るので、今日は帰らせてあげてください!」

場は笑いに包まれ、上司もしぶしぶ「そうだな、毎日付き合わせて申し訳ないな」と認めてくれました。
こうして、私は無事に母の晩御飯にありつけたのです。その日の食卓と先輩のあたたかさは、今も心に残っています。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2012年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。