問題のパート女性
松田さんは、よく会議中に居眠りをしてしまいます。理由を尋ねると「飼い犬が夜中に起こしてくるから疲れているのよ」という回答。はじめのうちは同情していましたが、あまりに多い居眠りの頻度と毎回悪びれもせず同じ回答をくり返すため、周囲はモヤモヤしていました。
遅刻が続いた時も「近所の夫婦が喧嘩をしていて巻き込まれたの」と説明されますが、遅れるたびに毎回夫婦喧嘩に遭遇しているというのは……と不自然に感じていたのです。
不可解な請求と態度
さらに問題となったのが、通勤のガソリン代の請求。他のパートと比べて明らかに高額で、自宅からの距離を考えて計算しても不自然でした。
本人に確認すると、「うちは遠いから。絶対これくらいかかるのよ」と強気の返答。
上司が何度か注意をしたのですが、「あら~申し訳ないわ~」と笑って流し、全く改善する気配がありません。悪意があるわけではなさそうですが、周囲がストレスを募らせるばかりで、私たちは「またか……」とため息をつく日々でした。
長年の難題
松田さんの行動は、長年職場の難題となっていました。注意してもニコニコとした態度でまったく響かない、改善もしない。結果的に、誰もが見て見ぬふりをするしかなく、雰囲気が重くなる一方でした。
娘ほどの年齢だった私は直接対決する勇気もなく、部署全体が「諦めモード」に入っていたのです。
若手社員の一言
そんな状況を変えたのが、異動してきた入社3年目の原さん(仮名・25歳)でした。
ある日、松田さんの発言を聞いた彼女は純粋に驚いたようで、「松田さん、普段はとっても優しくて明るい素敵な方だなと思っていたのですが……そういうズルをするのってもったいないですね……」と、少し寂しそうな顔で言いました。
そのまっすぐな言葉に、松田さんは驚いた表情を浮かべます。以降、今までの問題行動はぴたりと止みました。私たちにとっては、ひやひやする瞬間でありながら、まさに救いの一言になったのです。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2014年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。