同期3人でスタートした毎日
私が高校を卒業してすぐに就職したガソリンスタンドには、同い年の同期が2人いました。真面目でしっかり者の潤くん(仮名)と、お調子者だけど人懐っこい巧くん(仮名)。タイプは違っていても、3人一緒に働くうちに仲間意識も強くなっていきました。
先輩に教わりながらの作業
ある日、潤くんがバッテリー交換を担当することになりました。あまり触ったことのない車種だったこともあり、先輩に手順を教わりながら、一生懸命メモを取っています。私は接客の合間にのぞき込み、「どう? 大丈夫?」なんて声をかけながら、一緒に勉強させてもらっていました。
不用意な一言と勝手な行動
そのとき、店内の電話が鳴り、先輩が対応のため持ち場を離れました。するとタイミングよく巧くんがやってきて、「この車種ならこうすればいいんだよ」と自信満々に言いながら手を出したのです。
次の瞬間、バチッと大きな音がして、私と潤くんは凍り付きました。ショートしてしまったのです。それでも巧くんは「あれ、おかしいな? こうやればいいはずなんだけど……」と、さらに触ろうとしたので、私は慌てて先輩を呼び戻しました。
信用を失う一瞬
戻ってきた先輩が確認すると、残念ながらヒューズが切れていました。部品を取り寄せるまで時間がかかるため、先輩はバイクで買いに走ることに。事情を聞きつけ、休日にもかかわらず駆けつけてくれた店長に、巧くんはこっぴどく叱られたのでした。
素直に学ぶことの大切さ
真剣に学ぼうとする潤くんと、知ったかぶりをして失敗した巧くん。その2人の姿を見て「分らないことを素直に聞くこと」がいかに大事かを強く学びました。
後から振り返ると、あの日の出来事は私自身にも大きな教訓になりました。知ったかぶりで信用を失うのは一瞬。逆に、分らないことを正直に尋ねて、ひとつひとつ覚えていく姿勢こそ、成長に繋がるのでしょう。今もあの日の「バチッ」という音を思い出すと、胸がヒヤリとします。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。