いつも通りのレジ業務のはずが
ドラッグストアでの勤務中、レジに立つ私の元に中年男性がやってきました。買い物かごにはお酒とおつまみがぎっしり。とはいえ、特に珍しい光景でもないので、私はいつものように淡々とレジを進めていきました。
ところが、会計の時にふと男性を見て、妙な違和感を覚えたのです。足元はふらつき、口から出る言葉もろれつが回っていません。まるで酔っているような様子に思わず眉をひそめました。
嫌な予感と胸騒ぎ
支払いを済ませた男性は、足取りのおぼつかないまま店を後にしました。私は同僚に「今の人、酔ってない? まさか車じゃないよね……」と声をかけ、急いで窓から外の駐車場を覗きました。
すると、男性は迷うことなく車の運転席へ。背筋がぞくりとしました。とっさに私は同僚に「警察呼んで!」と頼み、自分は男性を引き留めるため駐車場へ向かいました。
思わぬ行動に驚愕
駐車場につくと、男性はすでに運転席に腰を下ろし、買ったばかりのお酒を手にしていました。あまりのことに思わず窓をノックすると、男性は慌ててお酒を隠したのです。
強く責めれば逆上しかねない。私は「すみません。会計漏れがあったかもしれません」と、あえて穏やかに声をかけました。しかし男性は「いいよいいよ、また後で買いに来るから」と笑ってかわそうとします。必死に時間を稼ぎつつ、心の中では「早く来て」と警察を待ちました。
もし放っておいたら……
ようやく駐車場の入り口にパトカーの姿が見えた時、胸をなでおろしました。警察官が駆け寄り、事情を聞かれていた男性は、やがてそのまま連れていかれることに。
その後、「お酒を飲んでいました。通報ありがとうございます」と教えられ、もしあのまま男性が車を発進させていたら……そう考えると背筋が寒くなりました。
小さな違和感を見逃さないこと
普段の生活の中でも「何だかおかしいな」という小さな違和感は大切にすべきだと思います。勇気を出して行動したことで、誰かの命を守れたのかもしれない。あの日の体験は今も忘れられません。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。