銀行に勤める私の友人から聞いたエピソードです。「人は見た目によらない」とは言いますが、それでもやっぱり最初についたイメージはなかなか消えないもの。そんな思い込みが招いてしまった、まさかの事態とは……?

麦わら帽子をかぶったお客様

ミーンミーンとセミが鳴く、茹だるような暑い夏の日でした。麦わら帽子に短パンとサンダルという爽やかな装いで窓口に現れたのは、50代の男性のお客様です。

「預金を他の銀行と分けておきたくて」という理由で、この銀行での口座開設は初めてでした。「いや~今日もすごく暑いですね」「ホント毎日暑いですよね~」と世間話を交えながら、記入された口座開設届の職業欄に目を向けると「無職」に丸がついています。

お財布がまさかの……

「入金するお金は、この千円でお願いします」とお札を取り出そうとするお客様の手元をみると、お財布……ではなく、なんと青いチャック付きの透明なフリーザーバック!
てっきりお財布からお金が出てくると思っていた私は、一瞬ビックリ。

すると、「あぁ、ビックリさせてごめんね。透明だから、お金の出し入れがわかりやすくてね。妻には普通のお財布にしてって言われるのだけど、僕は気に入ってるんだよね」と、はにかみながらお気に入りポイントを教えてくれました。

突然の高額な振込

それから数日後のことです。「おい! 〇億円の振込が入ってるぞ!」「最近作られた口座だな。窓口を担当したのは誰?」「どんな感じのお客様だった?」と、高額な振込金額に支店全体がどよめく事態に。

口座の持ち主を調べると、なんと麦わら帽子でご来店された、あのお客様でした。

麦わら帽子をかぶったお客様の本当の姿

実は、あのお客様は自身で立ち上げた会社で大成功をおさめたのち、「趣味にもっと時間を使いたい」と会社を早期引退。現在は資産運用益だけで優雅に暮らしているそうです。

本当のお金持ちは意外と身なりではわからないと聞きますが、「本当だったんだ」と身に染みて実感したエピソードです。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2023年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:島田歩実
元銀行員として、女性のキャリアやお金にまつわるあれこれを執筆中。アメリカへの留学経験もあり、そこで日本社会を外から観察できたこともライターとしての糧となる。現在はSNSなどを介してユーザーと繋がり、現代女性の声を収集中。