「全部お任せ」で始まったプラン作り
友人は旅行会社で働いています。よく耳にするのが、お客さんからの「全部お任せします!」という言葉。一見すると楽に思える依頼ですが、実は担当者にとって最も頭を悩ませるリクエストだそうです。ある日も、初めて来店されたご夫婦から「私たち旅行に詳しくないので、全部お任せでお願いします」と言われました。
基準のない提案の難しさ
とりあえず日数や予算、行きたい国を尋ねても「どっちでもいい」「あなたに任せます」と返され、友人はプランを立てる基準がなく右往左往。無難に国内温泉旅行を提案すると「温泉はもう行き飽きた」と却下。次に人気の海外リゾートを提案すると「日焼けするのは嫌だから……」とまた却下。表向きは「お任せ」と言いつつ、後から希望を小出しにされるため、ますます迷走していきました。
会話から見えたヒント
行き詰まっていたとき、友人はご夫婦との雑談に耳を澄ませました。すると「最近ワインを控えてるけど、やっぱり好きでね」と奥さまが何気なく話したのです。その瞬間、友人の頭にボルドー地方のワイナリーツアーが浮かびました。単なる勘ではなく、会話の端々から「ワインが好き」というヒントを掴んだのです。思い切って提案すると、お二人の表情が一変。「実はワインが大好きなんです!」「まさにこういう旅行を探してました!」と大喜びしてくれました。
達成感とやりがい
帰国後には「人生で一番の思い出になりました」というお礼状まで届き、友人はこれまでの苦労が一気に報われたと感じたそうです。正直「全部お任せ」は担当者泣かせで困ることが多いのですが、観察眼を働かせてお客さんの“本当の望み”を見抜けたときの達成感は格別。ぴったりの提案にお客さまが笑顔になった瞬間、苦労してきた時間もすべて意味のあるものに変わるのだと実感しました。
友人いわく、「ちょっとクセになる瞬間」なのだそうです。
【体験者:20代・女性(旅行会社勤務)、回答時期:2024年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。