華やかな営業の陰で、準備やサポートに徹する人事総務の仕事。表に立つことはないけれど、確かに支えとなっている。そのことを実感できた一幕をご紹介します。

舞台裏に徹する日々

30代でIT企業に勤める雪(仮名)は、人事総務を担当しています。
人員の調整、備品の管理、資料の作成など、普段から裏方に回ることが多い役割です。会社の成果を直接数字で示すこともなく、「陰で支える」ことが仕事の中心でした。
ある日、彼女は展示会の設営準備を任されることになります。会場に什器やパンフレットを運び込み、ブースを整える。地味で体力の要る作業ですが、営業スタッフがスムーズに接客できるよう、細かな調整が必要な欠かせない仕事でした。

華やかな営業との対比

展示会当日、営業スタッフたちは次々と来場者へ声をかけ、堂々と製品を紹介していました。笑顔で名刺を交換し、商談へと結びつける姿は輝いて見えます。
雪は休憩中「今日は商談予約2件、契約も1件取れそうだ」「やったな!」と話し、ハイタッチする営業スタッフの光景を少し羨ましく思いました。
自分は裏方として人目に触れない場所で支えるばかり。「私は本当に会社に貢献できているのだろうか」と、自信を持てなくなっていました。

上司の意外なひと言

そんな思いを抱えたまま迎えた後日の会議。
営業スタッフが展示会での華々しい実績を報告し、表彰されていきます。
ひと通り表彰が終わると、上司がふと口にしました。「展示会がスムーズに始められたのは、総務が準備をきちんと整えてくれたからだ。あれがなければ営業スタッフも成果を出せなかっただろう」。
意外なひと言に彼女は驚きました。会議室では同僚からも拍手が起こり、初めて自分の努力が認められたと感じたのです。

裏方の誇りを胸に

その出来事をきっかけに、彼女の気持ちは変わりました。
舞台に立つのは営業スタッフかもしれないけれど、舞台を整えるのは裏方の仕事。その一つひとつがなければ成果は生まれない。そう気づいたことで、「自分の仕事は意味がある」と誇りを持てるようになったのです。
今も彼女は、光の当たらない場所で、確かな支えとなり続けています。

【体験者:30代・女性、回答時期:2023年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Tomoyo.H
郵便局や年金機構、医療法人の管理部門を歴任。これらを通して、働く人の労務問題や社会問題に直面。様々な境遇の人の話を聞くうちに、そこから「自分の言葉で誰かの人生にいいきっかけをもたらせたら」と、執筆活動をスタート。得意分野は、健康や自然食、アウトドア。