不思議な出来事に直面したとき、人は「偶然なのか、それとも何かの意味があるのか」と考え込んでしまいます。けれど、大切な人から受け継いだものは、ただの物以上の力を持つのかもしれません。今回は筆者本人が体験した不思議なエピソードを紹介します。

祖母の形見の数珠

実家の祖母が亡くなったとき、私は祖母が生前に愛用していた数珠を形見として受け取りました。私の家系はみんな霊感が強く、時に霊の気配に悩まされることも少なくありませんでした。その体質を受け継いだ次男も、たびたび怖い思いをしていたのです。そんなときには、個の数珠を次男に私、気配が落ち着いたら返してもらうようにしていました。

異様な夜

ある夜のこと、次男の様子が明らかにおかしくなりました。これまでとは比べ物にならないほど、恐怖に怯えているのです。私自身も部屋の一角に”異様な暗さ”を感じました。光を吸い込むように黒く沈み込み、底の見えない穴のよう……。慌ててできる限りの対処をしたうえで、祖母の数珠を次男に渡しました。次男は机の上に数珠を置き、その夜は長男の部屋で眠ったのです。

翌朝になると……

翌朝、嫌な気配は嘘のように消えていました。しかし、机の上に置かれたはずの数珠も消えていたのです。次男は「兄貴の部屋に行くとき、確かに机の上に置いたよ。浄化してくれるかと思って……」と言い、長男も「俺も机の上に置かれた数珠を見てる。それにこいつは俺とずっと一緒にいたから持ち出すタイミングなんてなかった」と証言しました。2人とも触っていないのに、数珠だけが忽然と姿を消したのです。

祖母の想い

あの夜に漂っていた気配は、これまでで最も強く嫌なものでした。けれど祖母の数珠がその力を全て使い、次男を守ってくれたのではないかと感じています。消えたのは不思議で仕方ありませんが、それは「最後まで孫を守る」という祖母の意思の表れだったのかもしれません。

守り続ける存在

数珠はいまだに見つかっていません。しかし不思議と心は落ち着いています。祖母が形を変えて、今も私たちを守ってくれているのだと信じられるからです。大切な人の形見はただの物ではなく、その人の想いが宿る依り代なのだと、あの出来事を通して実感しました。

【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。