高級ホテルのカフェでの出会い
都内の大きな駅前にある高級ホテル。その1Fにあるカフェで、私がアルバイトをしていた時のエピソードです。
ラグジュアリーで落ち着いた雰囲気ながら、ランチは手の届く価格帯で、店内はおしゃれなマダムたちでいつも賑わっていました。そんなカフェに、毎週末必ず姿を見せる1人の男性客が。
謎めいた常連客
その男性は決まって同じ席に座り、毎回違う女性と2時間ほど会話をして帰っていきます。
ときどき耳に入ってくる会話は「〇〇区にお住まいなんですね、僕は△△区なんです」や、「お休みの日は何をされてるんですか?」といった、初対面同士の自己紹介のようなやり取りばかり。
はじめのうちは「ここは出会いの場なのかな?」と、ただただ不思議に思っていました。
男性の人柄が垣間見える瞬間
しかし、男性客が訪れるようになって数か月。繰り返しお店で見かけるうちに、この男性の素敵な一面が目に留まるようになりました。
お手洗いの帰り道に、見ず知らずのマダムが落としたカーディガンをさりげなく椅子にかけて立ち去ったり、新人の店員が会計に手間取った際には「全然焦らなくて大丈夫ですよ。僕も学生時代にファミレスでバイトしていたのでわかります」と優しく声をかけていたり。さり気ない所作や言葉に、人柄の良さがにじみ出ていたのです。
次第に、「今日はうまくいくといいな」「素敵な人だから、きっといい出会いがあるはず」と、個人的に応援するようになっていました。
印象が変わる瞬間
そして、男性はぱったりと来なくなりました。早紀は「良いご縁があったのかもしれない」と、心の中で自分のことのように嬉しく感じたそうです。
最初は不思議な存在に思えても、人は外からの印象だけではわからないもの。人柄は何気ない行動や発言に表れていて、それに気がつくとぐっと見方が変わることを感じさせてくれた出来事でした。
【体験者:20代・女性アルバイト、回答時期:2020年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。