頼もしく見えた先輩の姿
保険会社で勤務していた頃、同じ部署に野中さん(仮名)という女性社員がいました。彼女は上司の言葉に「はい!はい!」と元気よく応えるタイプで、無茶ぶりの案件も「私がやります!」と迷わず手を挙げる姿勢を見せていました。周囲も当初は「なんて頼もしい人なんだろう」と感じていました。
イエスマンの本当の姿
しかし、引き受けているのは常識的に考えて到底こなせるものではない仕事量。「流石に断ったほうが良いのでは……?」と声をかけても、本人は「サラリーマンなんだから『ノー』は言いたくないの。『はい』と答えてあとは自分が頑張ればいいのよ」と語り、上司にはとにかくいい顔を見せていました。ところが実際には、締め切り間近の仕事を裏で後輩たちに次々と丸投げ。しかも成果はしっかり自分の手柄としてアピールするという二枚舌ぶりでした。
周囲へのしわ寄せと転機
そんな状況に不満を募らせた後輩が、ついに上司に直談判。「私たちに全部回ってきています」と打ち明けたことで、上司は野中さんの裏の顔を知ることになりました。そのあと厳しく指導を受けた野中さんはさすがに反省したのか、後輩に仕事を無茶ぶりしたり、自分の手柄のように報告することはなくなりました。
本来なら「はい!」と引き受ける姿勢はチームのためになるはずが、結果的には迷惑や効率低下につながることを彼女自身もようやく痛感したようでした。
学んだ「ノー」の大切さ
この一件を通じて、私は「イエスマン」であることが必ずしも良いわけではないと痛感しました。自分の実力や体力ときちんと相談し、時には『ノー』を伝えることでむしろ仕事を円滑に回せるのだと学んだのです。それ以来、無理なものは「今はできませんが、〇日までなら対応できます」と具体的に伝えるよう心がけています。そして何より、年次が下だからといって都合よく使うのではなく、後輩たちからも「一緒に仕事をしたい」と思われる存在になることも、チームで仕事を効率よくしていくコツだと痛感した出来事でした。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2017年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。