ある日のスーパーで、小さな子どもの行動に大人たちがざわついた瞬間がありました。スーパー勤務の知人の藍さん(仮名)に聞いた、思わず心臓が止まりそうになった出来事と、待っていた意外な結末とは……!?

走り去る小さな影に、心臓が止まりそうに

スーパーで勤務していたある日のこと。忙しい時間帯に、ふと小学生くらいの男の子が視界を横切りました。
手にはお菓子をしっかり握りしめ、しかしレジには並ばず、足早にそのまま出口へ一直線。周囲にいた大人たちの視線も一斉にその子に注がれ、私の頭に浮かんだのはたった一つの言葉。

「もしかして、万引き!?」

一瞬で背筋が冷たくなり、心臓がドクンと大きな音を立てた気がしました。

慌てて追いかけた先で見たもの

これは大変だ!と、足早にその子を追いかけました。すると男の子はスーパーを飛び出し、隣の店舗へと駆け込んで行ってしまったのです。その姿を見ながら「やっぱり……?」と不安は増すばかり。万が一のことを考えると、見過ごすわけにはいきません。この事態を一旦店長へ相談しようと、店内へ戻ることに。

それから数分後、笑顔で男の子が戻ってきた時、私は思わず身構えました。あっけらかんとしている彼の小さな手には数枚の小銭が握られていたのです。

誤解が解けた瞬間の安堵と恥ずかしさ

事情を聞けば、彼はお菓子を選んでから「お金が足りない」と気づき、急いで隣の店にいた母親のところへ向かっただけだったとのこと。「お菓子を置いて行けば、他の人に取られてしまう」という子供心から、無我夢中で走り出してしまったのでしょう。

すべてを知った瞬間、胸をなで下ろすと共に、赤面するような恥ずかしさが込み上げました。大人の目からすると一大事でも、子どもにしてみれば単なる「用事」だったのです。

想像力が生む“ヒヤリ”と教訓

この出来事から学んだのは、現場では常に「最悪のケース」を想像する習性があるということ。
安全や防犯のためには大切ですが、時には想像力が先走って、子どもの何気ない小さな行動まで“事件”に見えてしまうこともあります。結果的に誤解で終わったとはいえ、その一瞬のヒヤリは今でも鮮明に覚えています。

万引きと決めつけた行動を取らなかったことが不幸中の幸いです。改めて冷静さと観察力の大切さを実感した出来事でした。

【体験者:40代・女性スーパー勤務、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Tomoyo.H
郵便局や年金機構、医療法人の管理部門を歴任。これらを通して、働く人の労務問題や社会問題に直面。様々な境遇の人の話を聞くうちに、そこから「自分の言葉で誰かの人生にいいきっかけをもたらせたら」と、執筆活動をスタート。得意分野は、健康や自然食、アウトドア。