仕事相手やお客様の発言への対処に困ってしまったことはありませんか? 今回は私が大学生の頃、人生で初めてのセクハラに遭遇したときのエピソードです。突然の出来事で、どう対応すればよいか戸惑っていた私を救ってくれたのは、意外な人物でした。

プールの監視員

大学時代、私はフィットネスクラブでプールの監視員のアルバイトをしていました。
監視員の仕事は、プールサイドから会員さんの安全を見守ることです。それに加えて、水泳教室も担当していたため、顔見知りの会員さんと世間話をしたり、泳ぎ方を相談されたりといつも賑やかに楽しく仕事をしていました。

あまり見たことのないBさん

その日も、常連のAさん(90代・女性)が来館しており、お孫さんの話を聞きながら、いつもと変わらぬ和やかな時間を過ごしていました。
すると、70代くらいの見慣れない男性会員のBさんがプールに現れました。私は普段通りの笑顔で「こんにちは」と挨拶をしました。

「お尻大きくて安産体型やね」

Bさんは、少し二ヤついた顔で私とAさんに近寄ってきて「こんにちは。お姉ちゃん水着なんやね。いいねー」と話しかけてきたのです。「ちょっと気持ち悪い」と思いながらも、私は苦笑いで「そうなんですよ」と返します。さっさとその場を離れようとした瞬間でした。

「お姉ちゃん、お尻大きくて安産体型やね、よかったねー」

さらに追い打ちをかけるように、私の体型をからかう言葉を重ねてきたのです。
私は人生初めてのセクハラに、どう対応すべきか分からず戸惑うばかりでした。

救世主Aさん

何も言い返せずに困っていると、横にいたAさんが口を開きます。

「あんた、それはセクハラやで。やめや。この子はいい子やし文句言わんけど、私は怖いもんないんやから、それ以上セクハラするんやったら店長に言いつけて出禁にしてもらうで」

毅然とした態度と言葉に、Bさんは気まずそうにそそくさとプールを後にしました。
突然の出来事に動揺していた私にとって、Aさんが神様のように思えたくらいです。

人生初のセクハラで得たこと

私はBさんが帰った後、何度もAさんに感謝を伝えました。すると、Aさんは笑顔で「あんたのこと孫やと思ってるから、あんなん許せへんねん。また何かあったらいつでも言うてきてな」と、優しく声をかけてくれたのです。
身を挺して守ってくれただけでなく、心あたたまる言葉をくれたAさんの強さと優しさに深く感動しました。だれかが同じような目に遭っていたら、私もAさんのように守るようにしようと心に決めた瞬間でした。

【体験者:20代・大学生、回答時期:2020年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:saya.I
総合病院で看護師として勤務を通して、介護や看護の問題、家族の問題に直面。その経験を生かして現在は、ライターとして活動。医療や育児のテーマを得意とし、看護師時代の経験や同世代の女性に取材した内容をもとに精力的に執筆を行う