「コールセンターの仕事って大変そう」「保留が長いとお客様に怒られそう」そんなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。実際、私は20代の頃、大規模コールセンターのオペレーターとして働いており、毎日がクレーム対応との戦いでした。今回は、そんな中で実際に経験した「3時間保留」という衝撃的な出来事と、思わず笑ってしまったお客様とのやりとりをご紹介します。

電話がつながらない!毎日がクレームとの隣り合わせ

私が配属されたのは、とにかく「電話がつながらない」と有名な部門。お客様は最低でも1時間は保留音を聞き続けるのが当たり前という状況で、順番待ち件数は常にモニターに表示され、減る気配はありません。

当然、ようやくつながった瞬間に怒り心頭のお客様も多く、オペレーターは謝罪から対応を始めるのが日常でした。

システムトラブルで「3時間待ち」の表示

ある日、システムトラブルが重なり、保留時間はさらに悪化。
なんと、最高で「3時間待ち」という信じられない数字が表示されたのです。

社内は騒然、オペレーター同士が「これはまずい」と目で合図し合うほどの緊迫感でした。

映画を見終えてからの神対応

夕方、ようやく混雑が落ち着きはじめた頃、1本の電話がつながりました。
私は深呼吸をして受話器を取り、まずは謝罪。

「大変長らくお待たせいたしました。本当に申し訳ございません」

すると返ってきたのは、まさかの明るい声。

「大丈夫! いまさっき、スターウォーズのエピソード4を見終わったから!」

そう、保留中に映画を1本まるごと見終えてしまったとのこと。しかも、それを笑い話として伝えてくれる余裕まであったのです。私は思わず笑ってしまいながらも、改めて謝罪しました。

ユーモアは現場を救う

長時間の保留はお客様にとっても、オペレーターにとっても大きなストレス。多くの場合、つながった瞬間に厳しい言葉が飛んできます。

しかし、このお客様のようにユーモアを交えてくださる方がいると、現場の人間にとっては本当に救いになります。クレーム対応の多い職場だからこそ、その一言に心が軽くなる瞬間があるのです。

コールセンターの仕事で学んだこと

コールセンターは、クレームも感謝も、そして時には笑い話も飛び交う声の交差点。受話器の向こうには、ただ「顧客」ではなく、それぞれの日常や感情を持った人がいることを強く実感しました。

3時間保留という非常事態の中で出会った、映画を笑いに変えてくれたお客様。この体験は、私にとって「接客の本質」を教えてくれた忘れられない出来事です。

【体験者:30代・販売員、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Kazuko.H
広報・PRの経験を経て現在はライター・編集者に従事。学生時代から常に、ものを書く仕事に携わっており、「誰かの思いや現場の空気を言葉で伝える仕事」にやりがいを感じ、執筆活動中。地域創生やまちづくり、ライフスタイル、キャリア領域を得意とする。