父が頼まれた撤去作業
私の父の実家には、昔からお稲荷様を祀った祠がありました。
ある年、家を増築することになり、その祠を撤去しなければならなくなりました。けれど、本家の親戚たちは誰もやりたがりません。きっと祟りを恐れていたのでしょう。そんな中、「お前がやってくれないか?」と父に白羽の矢が立ったのです。
お人好しだった父は「分かった」と快諾。私は不安でいっぱいでした。大工だった父は、たった1人で祠を解体したのです。
枕元に現れたのは……
作業は無事終わりました。父にケガもなく、私はホッと胸をなでおろしたのですが、その夜のこと。
寝ていた私の枕元に、1匹の狐がいたのです。そして、私をじっと見つめていたかと思うとスッと消えていきました。
翌朝、父にその事を話すと、父もまた驚いた顔で話してくれました。
「俺のところにも来たんだよ。それで狐が言ったんだ。『お前たちは7代先まで穀を摂れないだろう』って……」
穀を摂れない。それはつまり、食事が摂れないということです。
父や親戚たちの病
その言葉から間もなく、父の体調が急激に悪化。検査の結果、胃がんが見つかります。
そして不思議なことに、その後も父方の親戚たちに病が続きます。誰もが胃がんや重度の糖尿病を患い、食事制限を余儀なくされたのでした。必ずしも祟りとは限らないけれど、私にはあまりに偶然が重なりすぎているように感じられました。
今でもよぎるあの言葉
そして今、私自身も糖尿病を患い、大好きだった甘いものも食べることができなくなりました。やせ型だった体はさらにやせ細ってしまいました。「7代先まで穀を摂れない」今でも、あの言葉がふと頭をよぎることもあります。
祟りを信じるかどうかは人それぞれ。ですが、長く守られてきたものには、きっと意味があるのだと思います。決して軽い気持ちで触れてはいけないのです。どうか私の子どもや孫たちは健やかでいてほしい……私はそう祈り続けずにはいられません。
【体験者:70代・女性、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。