テレビで商品紹介
私が働いていたホームセンターは全国展開をしていて、テレビでも頻繁に新商品や便利グッズの紹介がされていました。出演する店舗はほとんどが関東の大きい店舗で、紹介する商品がわかるとその商品の在庫が事前に集められます。
しかし、私が働いていたのは田舎の小さい店舗だったため、同じ商品を扱っていたとしても在庫数が少ない場合がありました。
在庫切れに激怒するお客さん
ある日の午前中、キッチン用品がテレビで紹介されると「購入したい」というお客さんが開店と同時に多数来店されました。
客足が落ち着いてきた午後のこと。1人の男性のお客さんが、「今日テレビでやってたキッチン用品どこにある? 家族に買ってくるように言われたんだけど」と、急いでいる様子で私に聞いてきました。
私は、「申し訳ございません。そちらの商品は既に完売してしまいまして、近隣店舗の在庫確認や取り寄せでしたら対応可能です。また、近くの店舗が……」と他の案を提案することに。
すると、男性は激怒!
「はあ? 使えねえな! テレビに出るくらいなんだからもっと在庫用意しておけよ! 話になんねえな!違う店行くわ」
そう声を荒げながら、退店してしまったのです。
1時間後に再来店
それから1時間ほど経った頃、先ほどの男性がまた来店されました。
「……近くの店舗に行ったら、店なくなってたんだけど」
さっきまでの勢いはすっかりなくなって、気まずそうに尋ねてきました。
実は、近くの別店舗は移転したばかり。先ほど私もあわせて説明しようとしたのですが、怒った男性に遮られてしまい、伝えることができなかったのです。男性は店舗の移転を現地で知り、再びうちの店に戻ってきたようでした。
「そちらの店舗は数ヶ月前に移転してしまったんです。移転先をお伝えしますか?」と私が聞くと、
「いや……やっぱりここの店で取り寄せの手続きしてもらっていいですか」と、男性は下を向いて小さな声で答えました。
話をしっかり聞く姿勢が大事
店舗を往復させてしまったことは申し訳なく思いましたが、頭に血がのぼった男性が最後まで話を聞かなかったのも事実。感情に流されずに人の話を最後まで聞くことの大切さを感じた出来事でした。
【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2018年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。