今回は私の友人がスーパーのレジで遭遇した、まさかの展開に場が凍りついたエピソードをご紹介します。日常の中の何気ない出来事に潜んでいた「予想外の関係性」が明かされた瞬間、横暴な態度をとっていた男性が一転して青ざめることに……。周囲も思わず沈黙した、その顛末とは?

静かな昼下がりのこと

平日の昼過ぎ。スーパーは特別混み合っているわけでもなく、レジもほとんどがスムーズに進んでいました。そんな中、友人のNちゃんが担当していたレジだけ少し行列ができはじめていたそうです。

列の先頭には、杖をついた高齢女性の姿。数日前に転んで足を怪我してしまったとのことで、バランスを取るのもやっとな様子。会計を済ませるにも、手元や体勢に気を配る必要があり、どうしても時間がかかってしまいます。Nちゃんは、できるだけテンポを保ちつつも、女性の手助けをしながら丁寧に対応していました。

突然の怒鳴り声が空気を切り裂いた

そのとき、後方から突然響いたのは、「おい!早くしろよ!」という怒鳴り声。レジ周辺の空気が一瞬にして凍りつきました。声の主は50代くらいの男性。腕を組み、明らかに苛立ちを隠す様子もなく、Nちゃんと高齢女性をにらみつけていたそうです。

Nちゃんは驚きつつも、落ち着いた声でこう言いました。
「こちらのお客様、お怪我をされていて……申し訳ありませんが、お待ちいただいてもよろしいでしょうか」その声に、女性がゆっくりと顔を上げ、怒鳴った男性をじっと見つめました。

意外な一言が静寂を生む

そして静かに、しかししっかりとした声で言ったのです。「……あなた、うちの近所のTさんじゃない。突然怒鳴るなんて、あいさつもできなくなったのねえ。だけれど、遅くてごめんなさい」まさかの言葉に、その男性は一瞬で表情をこわばらせました。そして周囲の視線が一気に自分に集まったのを察したのか、目をキョロキョロと泳がせて口元を引きつらせ、言い返すこともできず逃げるようにレジの列を離れていきました。
さっきまでの威勢はどこへやら、足早に去っていく後ろ姿は小さく、なんと情けないことでしょう……。

高齢女性の優しさに救われた空気

一瞬、レジ周辺は妙な静けさに包まれましたが、次第に小さな笑い声がもれはじめ、ピリついた空気はだんだんと和らいでいきました。女性は最後まで落ち着いた様子で、Nちゃんに向かって「本当にごめんなさいね、ゆっくりで……」と申し訳なさそうに一言。

Nちゃんは「いえいえ、大丈夫ですよ」と優しく答えたのでした。
ほかのお客さんたちからも、「ゆっくりでいいですよ」という声がどこかから聞こえてきたりと、その場は心がホッとするような雰囲気に包まれました。

怒鳴り声の後に訪れたこの静かな一幕は、むしろ周囲の心に優しさを残す出来事になったようでした。

【体験者:30代・販売員、回答時期:2024年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Mio.T
ファッション専攻の後、アパレル接客の道へ。接客指導やメンターも行っていたアパレル時代の経験を、今度は同じように悩む誰かに届けたいとライターに転身。現在は育児と仕事を両立しながら、長年ファッション業界にいた自身のストーリーや、同年代の同業者、仕事と家庭の両立に頑張るママにインタビューしたエピソードを執筆する。