店としては善意で行なったことが、逆に想定外の出来事を引き起こしてしまうこともあります。パニックになったお客さんの中には、「どうしてくれる」「店が悪い」と決めつけてくる人も……。今回は筆者がホームセンターで勤務していた時の、荷物をお客さんの車まで運ぶ中で起こったエピソードをお話しします。

ホームセンターでの仕事

私が勤めるホームセンターでは、お客さんが購入した商品が大きい場合や量がある場合、車まで運ぶのを手伝うことがありました。

ある日、一人で来店したのは50代くらいの女性のお客さん。お客さんはマットレスや掛け布団、ラグなどの比較的大きい商品だけでなく、炊飯器や包丁、まな板などのキッチン用品一式も購入していきました。

カートも2つ使用していましたが、どちらも一杯。お客さん一人の手で車まで運ぶのは大変そうでした。

嬉しそうなお客さん!

そこで男性の従業員が「よろしければ、お車までお持ちしましょうか?」と声を掛けます。お客さんは「わぁ、ありがとう! 助かるわ! 娘が一人暮らしをするから必要なものをとカートにどんどん入れていたら、いつの間にかこんなに買っていたのよ」と嬉しそうに話していました。

お客さんの車に男性従業員とお客さんで購入した商品を載せていると、「細かいものは助手席に載せてもらえるかしら」とお客さん。その指示どおり、男性従業員は小さめの購入品を助手席に載せました。

商品を全部載せ終え、お客さんをお見送りして店舗に戻ってきた男性従業員。しかし、そこから事件が発生します。

警告音の原因は……!?

「ちょっと! さっき商品を載せてもらってから車の様子がおかしいんだけど! 急いで車に来てもらえる? 故障なら弁償してもらうわよ!」

先ほどのお客さんがホームセンターに戻ってきて、頭に血がのぼった様子でサービスカウンターへ怒鳴りにきたのです。近くにいた私がお客さんの車まで行き、改めて要件を聞きました。

「ほら、聞けば分かるでしょ! シートベルトしてるのにピーピー音が鳴ってうるさいのよ! おたくのせいだからどうにかしてちょうだい! 責任とれるんでしょうね!?」

と、怒って次から次へと文句を言うお客さん。私は車内の様子を見て、考えられる可能性をおそるおそる話してみました。

「助手席のシートにもセンサーがついていますので、重い荷物を置くと人が座っていると判断してシートベルト未装着の警告音が鳴るんです。おそらくそれが原因だと思いますので、助手席の荷物を他に移動いたしますか?」

キョトンとするお客さん。しばらくして「あら、車って頭が良いのね! それなら、助手席にもシートベルトをしてあげればいいのね」とうなずき、その言葉どおりシートベルトを着けてみると警告音は止まったのです。

そこでお客さんの怒りはすっかり消滅。「あなたのおかげで助かったわ~! また買い物に来るわね!」と満足そうに笑顔で帰って行きました。

あきれる従業員

「あんなにこちらに対して怒っていたのに、手のひらを返すような態度だった」と私や周囲の従業員はあきれるのでした。

ただ、私もお客さんの立場になれば普段鳴らないはずの警告音にパニックになってしまうかもしれません。あのような場面では冷静になってしっかり原因を確認しないとな……と感じたのでした。

【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2022年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。