あなたの職場にも、不器用ながらにどこか憎めない同僚がいませんか? しかし、職場には別れがつきもの。今回は、ドラッグストアで長年一緒に働いてきた同僚の“最後の日”のエピソードのご紹介です。

15年間一緒に働いてきた大切な人

15年前のオープンから一緒にドラッグストアで働いてきたR子さん。当時50歳だった彼女が、ついに定年退職を迎えることになりました。

マイペースで、レジのスピードもゆっくりなR子さん。お節介なところもあって、お客様からクレームを受けることも少なくありませんでした。けれど、彼女はミスがあれば必ず謝り、こっそりマニュアルを読み返したり、周りに相談したりするような努力家でもありました。

私も時には思わずイラッとしてしまう場面もありましたが、その一生懸命さからいつしか“職場のお母さん”のような存在に。私にとっても特別な存在で、彼女のことが本当に大好きでした。

感謝を伝える準備

R子さんの退職日が近づくにつれ、私の中で「きちんとした形でR子さんを送り出したい」という思いが強くなりました。店のスタッフには色紙へのメッセージをお願いし、すでに退職した元同僚たちにも連絡。花が好きな彼女のために、フラワーアレンジメントも用意しました。

そして迎えた当日。店内を名残惜しそうに見渡しながら、いつも通りお客様に笑顔で接するR子さん。「今日が最後」と思うと、私たちも感慨深くなりました。

サプライズの瞬間

私を含めて数人はR子さんより先に退勤していましたが、17時半頃に駐車場へ集合。元同僚たちも駆けつけてくれました。店内に残っていた別の同僚がLINEでタイミングを伝えてくれて、18時半過ぎ、ロッカー室を出てきたR子さんの前に私たちはサプライズで登場。

色紙と花束を手渡すと、彼女は「みんな帰っちゃって寂しいなって思ってたのに、こんなに盛大に送り出してくれるなんて……」と涙ぐみました。その場にいた私たちも、R子さんの涙に思わずもらい泣き。

「この店が最後でよかった」と思えるように……

「私は本当に幸せだった。この店が人生最後の職場でよかった」
そう話すR子さんの目に、溢れる思いがにじんでいました。
今でもR子さんはたまに買い物にきては、おしゃべりして帰っていきます。もう一緒に働くことは叶わないけれど、その笑顔を見るたびに胸が温かくなります。

私もいつか定年を迎える日がくるでしょう。そのとき、R子さんのように「この職場でよかった」と思える最後を迎えたい――そんな気持ちを胸に、今日もレジに立っています。

【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。