毎日たくさんのお客さんが訪れるドラッグストア。接客をしていると、たまに予想外の行動をする人に出会うこともあります。今回は筆者本人が体験した、ちょっと焦ったエピソードを紹介します。

中年の男性客にサイズ確認をすると

その日、来店したのは恰幅の良い中年男性。「腰が痛くてね。コルセットが欲しいんだ」とのことでした。

腰痛用のコルセットはサイズがS~LLと分かれていて、体型に合ったものを選ばないと効果がありません。しかし衛生用品のため、一度開封すると返品ができない商品でもあります。そのため初めて購入されるお客さんには、必ずサイズの確認をお願いしています。

私はいつものように、「腰回りのサイズは分かりますか?」と聞くと、「いや、分かんないな」と男性。そこで、売り場に備え付けてあるメジャーを渡し「よろしければ、多目的トイレで測ってきてくださいね」と伝えました。

ところが……次の瞬間、男性がまさかの行動に出たのでした。

「え、ここで!?」売り場で脱ぎ始める男性

男性はなぜか、その場でズボンのベルトに手をかけ、服を脱ぎ始めたのです。

そこはサポーター売り場の一角。確かにあまり人通りの多くない場所ではあるけれど、公共の場で脱ぎだすなんて想定外。「うわー、ここで脱いじゃダメですー!」慌てる私に気づいた店長と一緒に、服を脱ごうとする男性をなんとか止めたのです。

「全部脱がなくても、Tシャツの上からでも大丈夫です。もしきっちり測りたいのでしたら、ご自宅で測ってからでもいいですよ」そう伝えると、男性はムスッとした表情で私にこう言いました。「別にここで脱いだって、誰にも迷惑かけてないだろ。じゃあTシャツになるから、あんたが測れよ」

抱きつく距離感……

正直、困りました。Tシャツの上からとはいえ、腰回りを測るにはほぼ抱きつくような体勢になってしまいます。相手が女性のお客さんならまだしも、今回は体格の良い男性。(仕事だとしても、ちょっと……)

すると横にいた店長が「じゃあ僕が測りますよ」と、さっと助け舟を出してくれました。店長が落ち着いた様子でメジャーをあて、「お客様はLLサイズで大丈夫そうですね」と伝えると、男性は「今は持ち合わせがないから、あとで買いにくる」と言って帰っていったのです。

ただ、その後、男性がコルセットを買いにくることはありませんでした。

安心して選べる売り場作り

さすがにこの出来事は焦ったけれど、改めてお客さんにとっての“安心して商品を選べる環境の大切さ”を実感しました。

こちらの声かけがちゃんと伝わらなかったり、面倒だと感じる人もいるのかもしれません。だからこそ、もっとお客さんに寄り添って分かりやすく伝えることが必要だと感じました。そして、「プライバシーに最大限配慮した対応を」と心に決めた出来事でした。

【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。