私が働いていたホームセンターでは、大型商品やたくさんの商品を購入されたお客さんのために軽トラックの貸し出しサービスを行なっていました。ある日、「免許証は家に置いてきた」というお客さんが現れて……!?

軽トラの貸し出し

私がホームセンターで働いていたときのこと。日用品を扱う本館をはじめ、木材や建築金物を扱う資材館、園芸用品を販売する園芸館に加え、店舗の敷地内には外構工事を請け負う施設もありました。そういった施設や資材館では、大きい商品や重い商品も販売しています。

そのため、大型商品や一定の重さや量を超える商品を購入したお客さんを対象に、2時間無料で軽トラの貸し出しを行っていました。受付は、資材カウンター。もちろん、貸し出しには運転免許証の提示が必須です。

理不尽なお客さん

ある日、男性のお客さんが「軽トラを貸してほしい」とカウンターに訪れました。免許証の提示をお願いすると、「免許は家に置いてきてる」と当たり前のように言うお客さん。「申し訳ございませんが、運転免許証の確認ができないと貸し出しはできません」とお断りをすると、男性は激怒!

「軽トラを返す時に持ってくるからそれでいいだろうが!」

あまりの大声と険しい表情に驚いて、私は言葉に詰まってしまいました。

「俺はな、ここで沢山買い物しているお客様だぞ! 俺が買わないとこの店は潰れるぞ! それでもいいのか? お前にその責任がとれるのかよ!」
お客さんは続けます。それでも動じるまいと再度お断りすると、「なんだこの融通が利かない店は! こんな店は初めてだぞ! 店長を出せよ!」とヒートアップ。周囲のお客さんもその場に近寄らず、逃げるように去って行きました。

お客さんが焦り出した一言とは?

私だけでは事態を収拾することができず、上司に対応をお願いすることに。上司も何度も丁重にお断りをしましたが、それでも納得しないお客さん。かれこれ1時間近く経った頃。ついに、上司が切り出しました。

「申し訳ございませんが、これ以上は他のお客様のご迷惑にもなりますので……警察に相談いたします」

すると、一気に焦り出したお客さん。さっきまでの威勢はどこへやら、「俺だって……そんな大事にはしたくはないから……」と、急に歯切れが悪く。そして、そのまま俯いて静かにその場を立ち去りました。

自分の要求や行動を冷静に

自己都合なクレームや横柄な振る舞いは、周囲のお客さんの迷惑にもなります。自分の要求や行動が客観的に見て間違っていないか、理不尽でないか。冷静に見つめ直すことの大切さを感じた出来事でした。

【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2018年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。