職場での努力がきちんと評価される瞬間は、働くうえで大きなやりがいのひとつ。けれど、なかにはその成果を、まるで自分のもののようにしてしまう人もいるものです。今回は、筆者が出会った「手柄横取り上司」とのエピソードを紹介します。

手柄は独り占め、ピンチはスルー

調剤薬局で働いていた頃の話です。ベテラン事務員の山田さん(仮名)は、後輩に仕事をほとんど任せず、何でも自分の手柄にしようとするタイプ。情報共有はほぼなく、周囲はいつも手探り状態でした。

さらに、問題が大きくなりそうなときはそっと距離を置き、後輩たちに対応させて、解決の兆しが見えると突然話に割り込み、自分が解決したかのような態度を見せる人でした。

まさかのドヤ顔発言

なかなか仕事を任されない日々が続くなか、私は「自分にできることはないだろうか」と考えていました。

そんなとき、薬剤の発注ミスや過剰在庫がたびたび起きていることに気づいたのです。そこで、表計算ソフトで簡単な在庫管理システムを自作。試験的に導入してもらうと、ミスがぐんと減り、「これ便利だね」と現場でも好評でした。

ところがある日、全体会議で山田さんが「私が作った在庫管理システムで発注ミスが減りました」と発言。私の名前は一切出されず、まるで自分の手柄のように語るその姿に、何とも言えないモヤモヤと悔しさが溢れました。

手柄横取り、ここで終わらせない

そのまま終わるかと思った矢先、会議が終わったあと、上司からそっと声をかけられました。「これ、松田さん(私・仮名)が作ったって本当?」

実はこの日、私はあらかじめ会議の場でシステム導入の経緯を発表するつもりで準備をしていました。けれど、山田さんが先に話し始めてしまい、言葉を挟むタイミングを失っていたのです。

今しかない、という思いでした。私は、準備していた発表資料をひとつずつ説明。作業ログ、ファイルの更新履歴、そして担当者に送った説明メールまで。誰がどのタイミングで何をしたのか、一目でわかるようにまとめてありました。

「ついに来た」逆転の瞬間

上司はすぐに状況を察し、翌週の会議で「この在庫管理表は松田さんが開発してくれたものです」と、皆の前で正式に紹介してくれました。その瞬間、山田さんは苦笑い。「そうだったかしら」ととぼけてみせたものの、それ以上は何も言えず、会議室は少し気まずい空気に包まれましたが、私は心の中で小さなガッツポーズ。

その一件以来、山田さんは後輩に業務を少しずつ引き継ぐようになりました。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2020月6月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。