人間というのは多かれ少なかれ二面性があるのかもしれませんが、中にははっきりと裏表があるタイプの人も。今回は、私がアパレル販売員時代に遭遇した、ある親子の“豹変エピソード”をご紹介します。

仲の良さそうなお母さんと娘さんがご来店

私がアパレル販売員として働いていた時のこと。仲の良さそうなお母さんと20代前半くらいの娘さんが来店されました。お母さんは終始ご機嫌で、まるで赤ちゃんに話しかけるかのような高い声で「これかわいい〜!」と娘さんに話しかけています。

その様子に、親子仲が良いんだな〜と微笑ましく思いながら、商品説明をするために声をかけたのが始まりでした。

あれ? 私のこと見えてる? と不安になるくらいスルー

私がお声がけをすると、お母さんはこちらを見向きもせず、まるで私がいないかのようにスルー。「あれ? 聞こえなかったのかな?」と思い、もう一度声をかけると娘さんの方は会釈をしてくれるのですが、お母さんの方は全く反応なし。

私が話しかけている間も、お母さんは笑顔で娘さんと楽しそうに会話を続けています。一瞬戸惑いましたが、「接客されたくないお客様もいる」と判断し、一旦距離を取ることにしました。

レジで態度が急変!

しばらくすると、お二人が購入する商品を決めてレジにやって来ました。

レジでは必ず確認すべき項目があるので、私は「ポイントカードはお持ちですか?」とお声がけしました。ところがここでも返事はなし。お母さんは先ほどまでの笑顔はどこへやら、無表情で視線をレジ台に落としたまま。

仕方なく、再度「ポイントカードはお持ちでしょうか?」と確認すると、お母さんが突然顔を上げ、「早くしてくれない!?」と鬼のような形相と強い口調で言い放ちました。それまでとは180度違う態度に驚きましたが、「申し訳ありません」と謝罪し、作業を再開しました。

人間いろいろありますよね……

その直後、お母さんは後ろに立っていた娘さんに話しかけ、先ほどまでと同じ高い声で「この色かわいいよね〜!」と笑顔で話しかけています。その豹変ぶりに内心驚きながらふと娘さんを見ると、申し訳なさそうに目を伏せています。

もしかすると、お母さんは普段からこうなのかもしれない……と考えると、娘さんが少し気の毒に思えてしまいました。親子の間でどんな事情があるのかはわかりませんが、世の中には色んな人がいるんだなぁ……と考えさせられる出来事でした。

【体験者:20代・販売員、回答時期:2012年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Mio.T
ファッション専攻の後、アパレル接客の道へ。接客指導やメンターも行っていたアパレル時代の経験を、今度は同じように悩む誰かに届けたいとライターに転身。現在は育児と仕事を両立しながら、長年ファッション業界にいた自身のストーリーや、同年代の同業者、仕事と家庭の両立に頑張るママにインタビューしたエピソードを執筆する。