筆者がホームセンターで働いていた時のこと。お金の管理はきっとどのお店もシビアに行っているはず。私の働く店舗でも、マニュアルがきっちりと決められてお金が管理されています。しかし、人間のやることなので、たまにミスも起こってしまいます。ですが、ミスに不運が重なると大変な大事件になってしまい──?

閉店作業

私の働く店舗では、閉店後に全てのレジの売り上げ金を正社員が回収することになっていました。ホームセンターというお店の特性上、レジは本館だけでなく、別館である園芸館や資材館にも複数ありました。

複数箇所あるので、担当のスタッフは全てを回収してから1日の業務を終えます。責任は重大ですが、業務としてはとてもシンプルなもの。そのため、その店舗には新入社員が3人いましたが、入社後数ヶ月が経っているので、その新人たちが回収の業務を行うことも多々ありました。

お金が足りない!?

閉店後に回収したお金は、事務所できちんと保管し、開店前に担当のパートさんがレジに順にお金を入れていきます。

そんなある日のこと、レジ入金の担当の女性パートさんが「レジに入金するお金が足りないです」と困ったように店長に報告しました。これは一大事です。

「足りない!? もしかして、昨日の閉店作業の時に回収し忘れたレジがあるのかな?」と店長は慌てて、前日のレジの回収履歴を確認しました。

回収し忘れの時に限って……

確認してみると、どうやら園芸館のレジの売り上げ金が足りないことが分かりました。

「昨日、園芸館の外のレジの売り上げ金を回収したのは、新入社員の佐藤さん(仮名)だね。話を聞いてみよう」と店長は佐藤さんを事務所に呼びます。

やってきた佐藤さんに店長が「昨日園芸館のレジの売り上げ金、佐藤さんが回収してくれたよね? 売り上げ金が10万円足りなくて何かトラブルとかなかった?」と尋ねます。

「えっ!? 昨日確かに全て回収していて、トラブルはありませんでした」と佐藤さんはびっくりした様子で言いました。
そこで、園芸館のレジを再度確認に行ってみます。ですが、レジの中にお金はありません。

「ドロワー(レジ内にある現金を収納する場所)の中のお金もしっかり回収した?」と店長が佐藤さんに聞きました。

すると、佐藤さんはハッとした表情で答えました。
「……もしかするとドロワーは回収し忘れたかもしれません」

しかし、それでは回収し忘れたお金はどこに行ったのか? 防犯カメラで確認をすることにしました。するとそこには、閉店後の22時頃、全身黒い洋服を着た人がレジの鍵をこじ開け、ドロワーのお金を盗んでいく姿が映っていたのです!

ミスに不運が重なる

店長はすぐに警察に通報をし、その後捜査となりました。
その日たまたま回収し忘れただけ。何もなければ、すぐに解決するはずのミスでした。しかし、この日に限って泥棒に入られるとは、不運が重なってしまいました。

佐藤さんは新人とはいえ、とても真面目で一生懸命な人です。そんな人でも、ミスはしてしまいます。店舗としてこの反省を活かし、誰でも起こりうるミスをどう防いでいくか? を考え再発防止に向けて取り組んでいます。個人の能力に頼るのではなく、組織の仕組みでミスを防止することが大切だと学んだ経験でした。

【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2021年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。