ビル自体は高級ではないけど「お金持ち」が集まりやすい立地
私が20代の頃、高級住宅街が近くにある駅近のファッションビルで働いていた時の話です。そのビル自体は百貨店のようにハイブランドを揃えたリッチな雰囲気ではなく、主婦目線の雑貨や家具の他、ローブランドまで取り扱う親しみやすい雰囲気のビルでした。
とはいっても多くの芸能人が住んでいる立地にあったので、自然と裕福なお客様も集まるような場所でもありました。
大量購入しても単価は低めのお店で働いていた
私が働いていたのは10代後半〜30代前半をターゲットにした下着屋さんで、下着の他ルームウェアやカジュアルウェアの販売もあり、一人当たりの単価は5,000円ほど。気に入ったものがあればまとめ買いしてくださるお客様も多くいましたが、商品の単価が低いので、何十万も超えるほどの金額にはなかなかなりません。
私は異動で同じブランドの様々な店舗で働いており、百貨店での勤務経験もありましたが、1回のお買い物で大量に買ってくというお客様は見たことがありませんでした。
現れたのは、ランニングウェア姿の女性
そんな中颯爽と現れた一人のお客様。30代後半〜40代前半くらいの女性で、ランニングウェアでご来店されました。住宅街が近くにあるビルと言っても駅近で人も多く、お友達とのカフェやデートなどにも人気があったのでカジュアルな服装の人は多かったのですが、それでもランニングウェアの方はあまり見かけないので一際目立っている印象でした。
私は「ランニングの途中にフラッと立ち寄ってくれたのかな?」と思い、軽く声掛けをして様子を伺うことに。するとお客様の方から、商品についていくつか質問をしていただきました。取り扱っていた高機能な下着の説明をすると、お客様は一言。
「へー。じゃあここにあるの全部ください」
驚きのあまり思わず「えっ!?」と言ってしまいそうでしたがグッと堪え、「こちらの商品でお間違えないでしょうか?」と質問すると、「いや、色違いも全部」。
スピーディーかつ爽快なお買い物に圧倒された私
なんとお買い上げ金額は10万円をゆうに超えていました。さっぱりとした様子でお買い上げいただき、大きな荷物を抱え、何事もなかったように颯爽と去っていったお客様。あまりの爽快感に、「お金持ちってかっこいい……」と呟いてしまうほどでした。
【体験者:20代・販売員、回答時期:2020年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Mio.T
ファッション専攻の後、アパレル接客の道へ。接客指導やメンターも行っていたアパレル時代の経験を、今度は同じように悩む誰かに届けたいとライターに転身。現在は育児と仕事を両立しながら、長年ファッション業界にいた自身のストーリーや、同年代の同業者、仕事と家庭の両立に頑張るママにインタビューしたエピソードを執筆する。