筆者が調剤薬局で働いていた時のこと。薬局では老若男女いろいろな人に出会う機会があります。時には、びっくりしてしまうような患者さんと遭遇することも──。今回は、あるお金持ちの男性患者さんのエピソードを紹介します。

定期的にプレゼントをくれるEさん

入社1年目の頃の話です。当時勤務していた薬局には、月に一度薬局を訪れる男性患者Eさんがいました。Eさんはいつもブランド品を身につけ、高級車に乗っている、いわゆるお金持ち。毎回のようにスタッフ全員分のコーヒーやデザート、お弁当などを差し入れに持ってきてくれる人でした。

中でも私は気に入られていたのか、誕生日やクリスマス、バレンタインなどのイベントの度にバッグやアクセサリーなどを贈られました。「こんな高価なものは受け取れない」と伝えても、強引に渡されてしまい、断れずじまい。なんともいえない複雑な気持ちを抱えていました。

突然の告白に戸惑ったけれど

ある日のことでした。私はEさんから突然、「海外に土地を持っていて、新しい事業を始めようと思っているんだけど、一緒に手伝ってくれる人を探している。できれば付き合ってくれないか?」と告白されたのです。

もちろん驚きましたが、私はやんわりと断り、その場は割とすんなり収まりました。

しかし、冷静になって考えてみると、Eさんと私は月に一度顔を合わせるだけの、患者と事務員の関係。Eさんのことを何も知りません。本当にただのお金持ちで、ただの好意……?と疑ってしまい、だんだん怖くなってしまいました。

ある時から薬局へ来なくなる

その後、私は思い切って上司に相談。これまでの経緯を話したうえで、Eさんが来る日は接触を避けさせてもらうように。すると、やがてEさんは薬局へ現れなくなりました。申し訳ない反面、どこかホッとしている自分も……。

それからしばらく経ったある日のこと。私は、思いもよらない事実を知ることになったんです。

後になって知ったEさんの実態

人づてに聞いた話ですが、Eさんはかかりつけの病院でも問題になっていたとのこと。

どうやら、自分と同じくらいの年齢の事務員さん数名に声を掛けていたらしいのです。さらには、Eさんは女性に飽きっぽく、これまでも自分から女性に言い寄っておきながら、不倫や離婚を繰り返しているのだとか。

浮気性なEさんに呆れてしまいましたが、とはいえ、同時に何人もの女の子に高価な贈り物をするほどの財力には、思わず感心してしまったのでした。

【体験談:20代・女性会社員、回答時期:2016年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。