期待と不安を胸に、新生活がスタートする春。進学や就職を機に初めて一人暮らしをする人も多いですよね。けれど、それ以外の理由で一人暮らしをせざるを得ない場合も……。今回は筆者本人が仕事中に聞いてしまった、重すぎる新生活理由のエピソードを紹介します。

常連の高齢女性客が買っていたもの

つい先日、2人の息子の引っ越しを終えた私は、いつものように職場のドラッグストアでレジ対応をしていました。薄暗くなってきた頃、常連の高齢女性が来店していることに気づいたのですが、何だか違和感……。いつもはお菓子や豆腐など食料品だけ買っていくのに、この日は違っていました。女性の買い物かごの中身は掃除道具や洗剤、シャンプーボトルにバケツまで。珍しいな、と思いながらもレジを開始しました。

ほぼ毎日来てくれるこの女性はとっても話好き。レジをしている間の世間話がストレス発散になっているみたいなので、私もよく話に乗っかっています。

世間話が好きな女性客

もちろんこの日も、商品をスキャンしている私に話しかけてきました。「一人暮らし始めたよ」と。
いつもは買わないものを買ってる理由が判明し、ちょうど私の息子達も一人暮らしをスタートさせたばかりだったので、共通の話題で盛り上がるかもと思いました。ただ、『高齢女性が最近一人暮らしを始めた』というのは少し不思議です。

とはいえ、新生活=前向きというイメージがあった私は、「新生活、いいですね! 大変だろうけど、気楽かもしれませんね!」と女性に伝えようとしましたが、その言葉は飲み込むしかありませんでした。

一人暮らしの理由が衝撃!

「嫁と孫に愛想つかされたんだ。2人は出ていったよ」と自嘲気味に話す女性。衝撃の理由に私は数秒間固まりました……。(何があった? 愛想をつかされるってどんだけ?)プチパニックに陥った私に、女性は話を続けようとします。

でも、世の中には知らない方がいいこともある! 早めに会話を終わらせるために、必死で残りの商品をスキャン。やっと重い身の上話から解放されると安心したのですが……。

重すぎた世間話

「私が買い物に来なくなったら、一人寂しく逝ったと思ってね!」という女性の最後の一言で私の気持ちは重く沈んでしまいました。
色んな事情があるかもしれないけれど、こんなに重い世間話を短時間で聞かされるのは本当にしんどい……。

「そんな寂しいこと言わないでくださいよ。またお買い物に来てくださいね」と声をかけるので精一杯。何があったかは分かりませんが、慰めの言葉をかけるしかありません。

店員とお客さんは、友人とも知人とも言えない微妙な関係かもしれません。ですが、何度も顔を合わせるうちに、心を通わせていくことがあります。一期一会の関係かもしれませんが、自分ができる限りはなんとかお客さんの気分が晴れるように接客できたらなと感じた出来事でした。

【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。