長年同じお店で働いていると、時間の流れが単調になるものです。けれど、過ぎた年月を唯一実感させてくれるのが、地域の子どもたちの成長。今回は筆者である私が毎年体験している、寂しくもほっこりするエピソードをご紹介します。

子どもたちの成長を身近で感じる

私が地元のドラッグストアで勤め始めたのは15年以上前。当時保育園児だった息子たちは、今では成人。自分の子どもの成長があっという間だったので、ましてや、よその子の成長はビックリするほど早く感じるものです。

赤ちゃんだった子が、いつの間にか中学校の制服を着ていたり、中学生だった子が結婚して子どもを育てていたり……。そんな成長を見られるのも、働く楽しみのひとつ。

毎年3月に見られる光景

毎年3月になると、高校や大学を卒業して地元を離れる子どもたちが、親と一緒に買い物に来ることが増えるんです。「これ必要?」「自分が使うものなんだからちゃんと選びなさい!」「ホントに向こうでやっていけるの?」なんて親の声が店内の至る所で聞こえてくるので、ついつい笑ってしまいます。

常連客のお子さんとなると、小さい頃から見ているのでまるで親戚みたいな感覚になることも。お節介でも「頑張るんだよ」「ちゃんとご飯食べるんだよ」なんて言ってしまいます。

スタッフみんなに声をかけてくれる

そんな風に、毎年たくさんの子どもたちを見送ってきたけれど、今年の3月は特に寂しさを感じました。

小さい頃から人懐っこく、私のことを「ちゃん付け」で呼んでくれるA君。とうとう地元を離れてしまいます。お母さんと買い物に来たA君は、私を見つけると笑顔で駆け寄ってくれました。「今日買った荷物送って、明日出発……。この店に来られなくなるの、寂しいな」と話すA君は、他のスタッフにも順番に声をかけていました。

「ありがとう! 頑張るね! 」

買い物を終えたA君は、「お世話になりました。ありがとう! 頑張るね!」と笑って、私とハイタッチ。見送った後、胸が熱くなって涙を堪えられませんでした。

親でも親戚でもないけれど、こうやって声をかけてくれるのは本当に幸せです。毎年寂しいけれど、これからも子どもたちを見守っていこうと思います。

【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。