有名セレクトショップのカリスマ販売員として、約20年もの間キャリアを積んできた“ケイティさん”こと石坂恵子さん。洋服を知りつくすプロが、新型コロナ禍の2022年3月にスタートさせたライフスタイルブランド『kts(ケイティーズ)』が話題です。洗濯洗剤・柔軟剤・消臭剤など、ワードローブをケアするアイテムを中心としたラインナップには「お気に入りのものを大切にしながら長く使い続けてほしい」という、服と人を愛する元販売員ならではの玄人視点が存分に生かされています。
画像: 『kts(ケイティーズ)』について話すディレクターのケイティ(石坂恵子)さん。ブランドネームは自身の愛称に由来しているそう kts-product.com

『kts(ケイティーズ)』について話すディレクターのケイティ(石坂恵子)さん。ブランドネームは自身の愛称に由来しているそう

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『kts(ケイティーズ)』ってどんなブランド?

画像: kts Original Bottle Set “TRIOUS!”¥3,520・中に入った #3 Fabric Laundry Pre Mist & Fabric Freshner(消臭防止剤・2L) ¥2,750・#5 Floating Cleaner for Watch, Jewelry(時計、ジュエリークリーナー)¥6,930 ・#6 Reed diffuser(ディフューザー)¥14,300・#2 Fabric Softener(柔軟剤・2L)¥2,640/kts products kts-product.com

kts Original Bottle Set “TRIOUS!”¥3,520・中に入った #3 Fabric Laundry Pre Mist & Fabric Freshner(消臭防止剤・2L) ¥2,750・#5 Floating Cleaner for Watch, Jewelry(時計、ジュエリークリーナー)¥6,930 ・#6 Reed diffuser(ディフューザー)¥14,300・#2 Fabric Softener(柔軟剤・2L)¥2,640/kts products

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新型コロナ禍の真っ最中だった2022年3月に産声をあげた『kts(ケイティーズ)』。ステイホーム生活を余儀なくされ、自宅にいる時間が増えるなかで「清潔な環境や健康な体をキープしながら、毎日の家事を少しでも楽しくすることができたら」(ケイティさん)という一心で、販売員時代から興味を持っていたという洗濯洗剤の企画に着手し、誕生したハウスホールド・プロダクツブランドです。

画像: 『kts』の代表的なラインナップが並ぶショップ「YES TOKYO」内のディスプレイスペース kts-product.com

『kts』の代表的なラインナップが並ぶショップ「YES TOKYO」内のディスプレイスペース

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『kts』は、洗剤・柔軟剤・消臭剤・ルームフレグランスといったトイレタリー商品やファブリックケアツールのほか、アパレルウェアも展開。公式オンラインストアを中心に、セレクトショップのポップアップスペースなどでも販売し、多くのファッションアディクトからじわじわと支持を集めています。

『kts』誕生までの道のり

アメカジ好きが高じ、高校卒業後は即留学! セレブブーム全盛期のL.A.で学んだこと

生まれも育ちも東京という生粋のシティガールであるケイティさんは、1977年生まれの安室奈美恵さんと同世代。1990年代当時、爆発的なカルチャーブームを巻き起こしていた裏原宿エリアを中心に遊び、雑誌を読み漁り、おしゃれな年上の友人らに囲まれたファッションフリークな青春時代を過ごしたそう。

「バブル経済期の名残りもあり、学生もみんな高級ブランドを身につけて遊んでいましたね。当時はアメカジ全盛期で、姉のように慕っていた先輩たちはみな、ベルボトムジーンズにタンクトップを合わせ、ドクターマーチンをはくといったスタイルで裏原宿を闊歩していて、本当に格好よかった。彼女たちは今でも私の憧れのアイコンであり、原点なんです」

画像: MA-1ジャケット、ブラックスキニーデニムにウエスタンブーツ。アメカジはケイティさんが愛する永遠の定番スタイル

MA-1ジャケット、ブラックスキニーデニムにウエスタンブーツ。アメカジはケイティさんが愛する永遠の定番スタイル

アメカジへの憧れが高じ、高校卒業後の進路は迷うことなくアメリカ留学を選びます。

「私にとっての外国はアメリカ一択でしたから(笑)。最初はシアトルの語学学校へ留学しましたが、その後ロサンゼルスヘと移りました。企業でのインターンシップで学校の単位が取得できるプログラムを選び、今もラ・ブレア通りに本店を構える『アメリカンラグ シー(AMERICAN RAG CIE)』へ入社。当時は、プレミアムデニムを中心にセレブファッションが大ブーム。日本人のお客さまが多かったため、日本語で接客ができる私はとても重宝されて、インターンシップ期間終了後もまた戻って働くことができたんです。本当にラッキーでした」

ファッションの知識や接客・語学スキルよりも、謙虚に学び続ける姿勢や、L.A.らしい空気感を創り出す能力を身につけ、幅広い人脈を築いたことが、留学時代のいちばんの財産なのだそうです。

「『私は何でもできる!』と張り切って渡米した結果、英語も含めて“何もできない自分”の無力さをあらためて認識したんです。周囲の人に支えてもらってはじめて自分でいられるわけですから、常に謙虚でいることが最もスマートな身のこなしかたなのだと気がつきました。もちろん、アメカジ本場のムードを肌感覚でつかめたのも大きい。『L.A.っぽくして』と頼まれたら、誰もが“それ!”と感じるようなスタイルを即座にご提案できるセンスが磨かれたのだと思います(笑)」

30歳の節目を目前に帰国。ショップスタッフのキャリアがスタート

そうして7年ほど充実した留学生活を送っていたケイティさんですが、30歳の節目を目前にして帰国を決意。東京で販売員としてのキャリアをスタートさせます。

「『そろそろ自分の人生の方向性をきちんと決めなくては!』と不安になり、 とりあえずいったん帰国することにしました。29歳で社会人1年生ですよ(笑)。引き続き、ファッションを中心にライフスタイルを提案する仕事がしたくて『エストネーション(ESTNATION)』に入社し、六本木ヒルズ店に配属されました。社内のカスタマー・リレーションの仕組みがしっかり構築されていたのが幸いして、恵まれた環境で接客スキルをしっかりと学び直すことができました」

そんな中、L.A.発の老舗セレクトショップ『ロンハーマン(Ron Herman)』が2009年8月に日本初上陸。日本展開プロジェクトに参画していた元同僚から「一緒に働かないか?」と誘われます。

「留学時代に憧れていた超有名店からのお誘いですから、もちろん即決。二子玉川店の店長兼スーパーバイザーを12年間務めました。社是である“テーマパーク以上の楽しいショッピング体験を『ロン・ハーマン』で”を店頭で忠実に再現しようと、スタッフ一丸となって、店づくりや接客にさまざまな工夫を凝らしました。ファミリーでお見えになるお客さまも多かったですし、喜ばれるのを見たらこちらもうれしいじゃないですか。人間関係も良好で、本当に楽しい毎日でした」

「本当に自分のやりたいことは何か?」新型コロナ禍下を経て退職を決意

順調だったケイティさんの販売員生活を新型コロナ禍が襲います。世界中で急速に感染拡大し、2020年4月には東京都を含む7都府県に緊急事態宣言が発令され、ケイティさんらも店舗の休業を余儀なくされます。

「店舗でのリアル接客販売にこだわっていた『ロン・ハーマン』も、5月末についにオンラインストアをオープン。私たち店舗スタッフによる接客実績があったからこそお客さまが離れず、店が開いていなくても商品が売れていったわけですが、当時はそんなふうに前向きに考えられず、虚しさのような複雑な感情が募る一方でした」

世界の潮流が大きな転換期にさしかかったのを実感し、自分が本当にやるべきことを見定めようと退職を決意したケイティさん。名物販売員として長年勤めてきた彼女の(突然のように見える)退職宣言に周囲は驚きますが、不思議なことに引き留めようとする人はいなかったそう。

「職場の不満を漏らすこともなかった私が“辞める!”と言うのですから、『この人、本気で何かをやる気なんだな』と納得してもらったようで、前向きに送り出してもらいました」

服のため、お客さまのため、環境のため。「洋服をケアするブランドを」

そうして退職したケイティさんは、ステイホーム生活を続けながら、自分が本当にやりたいことを突き詰めていくうちに「洋服のケアを極めることが天命では?」という強い思いに気づいたそう。

「販売員時代、自分が提案して売った洋服は、自分の手を離れてからもお客さまに大切にしていただきたかったので、売る前に必ず洗濯表示を見て、お手入れ方法をアドバイスするように心がけていました。たとえば『このカットソーは裾がほつれやすいので、必ずネットに入れて洗濯してくださいね』とか、『ドライクリーニング指定になっていますが、素材的にご自宅でも手洗いできますよ』といったふうにです。私自身、家事の中で特に洗濯が好きなこともあり、服を大切に手入れできるプロダクトを提供することこそ、自分にできる最高のことなんじゃないかとひらめきました。『服だけじゃなくて、それを身につける人や、その人が生きる生活環境に優しい商品ならもっといいじゃん!』 ……と、アイディアがどんどん膨らんでいったんです」

画像: 『kts』を代表する人気商品である、#3 Fabric Laundry Pre Mist & Fabric Freshner(消臭防止剤・2L・¥2,750)のスプレーボトルを手に

『kts』を代表する人気商品である、#3 Fabric Laundry Pre Mist & Fabric Freshner(消臭防止剤・2L・¥2,750)のスプレーボトルを手に

「服にも人にも環境にも優しい洗剤を作りたい!」と方向性を定めたケイティさんですが、ゼロからの起業。事業を立ち上げるべくビジネスパートナーを探すうちに、株式会社トランスヘリテイジジャパンでOEM薬剤製品の開発を手がける、臭気鑑定士の片山正顕さんと出逢います。

「いつも魚ばっかり釣っているアウトドア好きの本当におもしろい方で、連絡をとるうちに意気投合。汚れを落とす洗剤成分のはたらきや、嫌なニオイが発生するメカニズム、下水の仕組みなど、素人の私にもわかりやすくていねいに教えてくださいました」

片山さんをアドバイザーとし、洗剤生産を委託する工場を決めたり、ブランド名やロゴを決めたり、ボトルメーカーを決めたり。委託先にはなるべく足を運んで綿密なコミュニケーションを図りながら、1年ほどの準備期間を経て、ついに2022年3月、『kts(ケイティーズ)』をデビューさせます。

ひとりビジネスを支えてくれる、大切な仲間たち

画像: ケイティさんの人間関係構築術

ケイティさんの人間関係構築術

『kts』のプロダクト販売は、自社オンラインサイトのほか、セレクトショップでのポップアップスペースを頻繁に実施。自身も店頭に立って接客し、販売員時代の同僚やお客さまらが大勢訪れるそう。今でも温かく見守ってくれる仲間たちの存在が、ケイティさんの大きな支えになっているといいます。

「販売員時代の同僚の進路が本当に多彩で、PR会社や家具屋を経営している人、フォトグラファーやアーティストなどがいます。それぞれが頑張っていてとても尊敬していますし、今でも仲よくさせてもらっています。今はなんでもひとりでやらなければならないので、困った時や相談したい時に、具体的なアドバイスや励ましをくれる仲間の存在が本当にありがたい。彼らこそ私の財産です」

インタビュー後記

販売員時代のケイティさんの接客スタンスは“対等”。ゲストが選んだ服が本当に本人に似合うかどうか・本人のライフスタイルの観点から見て長く着続けられるか・過去のショッピング履歴から似たようなものを持っていないか・着回しがきくかetc.、顧客に対し、フラットな視点で冷静なアドバイスを次々と繰り出す媚びない接客術が好評でした。「こだわりすぎず、引くべきだと思ったら引く」というタイミングの見極めも見事で、起業後もその考え方を生かしたビジネスを展開しています。フリーランスがストレスフリーで長く仕事を続けていくスタンスの鑑を見た気がしました。そんなケイティさんが自ら企画・開発する『kts』の未来に期待です!

Photo:Haruka Saito Edit&Text:OKISHIMAGAZINE

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