
デザイナーのアリサ。
【Brand Profile】Alisa Cayoo(アリサ・キャユー)
「記憶を形で残すこと」をテーマにしたジュエリーブランド。デザイナーのアリサは、多くの引越しの経験から思い出の品を手放すことの難しさを実感。その体験が、ジュエリーに記憶を託すというコンセプトの原点となっている。これまでに200点以上の一点物を制作。すべてのピースに物語が宿っている。

アリサに会いに訪れたのは、アート・ファッションストアAPOC主催のポップアップイベント。新進気鋭のデザイナーピースが並び、パリのファッションシーンを象徴するスペシャルな空間でした。
この世にふたつとない、唯一無二のジュエリー
Alisa Cayooが生まれたのは、アリサがジョージアで暮らしていた頃のこと。大学卒業後にジョージアに渡ったアリサは自然に囲まれた静かな日々のなかで、小さなメタルパーツやチェーンを組み合わせ、アクセサリーを作り始めたといいます。
「昔からセンチメンタルなアイテムが好きで、ヴィンテージのパーツを集めていたんです。それに、スタイリストの仕事で使っていたものもたくさん手元にあって。それらを組み合わせ、自分のためにジュエリーを作り始めました。最初は趣味の延長でしたが、次第にまわりから『それ、どこで買ったの?』って聞かれるようになって。そこから“ブランド”として意識するようになりました。」

アリサがスペインを旅行しながら集めたピースを組み合わせたジュエリー。目を引くのは、ハート型のロケットに埋め込まれたガールズの写真。「スペインの骨董市で見つけたモノです。彼女たちは一般人の女の子たちの写真だと思います。自分たちのロケットを骨董市に出すなんて、面白いですよね!」
小さな思い出を集めて繋ぐストーリー
ブランドの命名には、偶然とは思えないような出会いと物語が隠されているといいます。
「“Cayoo”というのは、もともと私が使っていたニックネームを短くしたものです。響きが気に入っていて、ブランド名にしようって決めました。そのときはフランス語の意味なんてまったく意識していませんでした。それがあるとき、パリで出会ったデザイナーのKenza Iatridesに『“Cayoo”って、フランス語で“小石”を意味する“cailloux(カイユ)”に響きが似てるけど、知ってる?』って言われて、びっくりしました。 “小石”っていう言葉が自分のものづくりの姿勢と偶然つながった気がして。私のやっていることは小さな石のような思い出のピースを集めて、ひとつのかたちにしていくこと。これは必然だったのかなって思えるような出来事でした。」
「いまパリで活動していること自体も、振り返ると不思議なことです。実は、最初に旅行で来たときは全然いい印象じゃなかったんですよ。 “こんな場所に住むなんて絶対ムリ”とさえ思っていました。でも、いまではすっかりパリのファンです。人との出会いが、街の印象をこんなにも変えるなんて、自分でも驚いています。」

(画像提供:Alisa Cayoo)
創作のプロセスとこだわり
ジュエリーに込めるのは、パーツの“背景”までも想像したくなるような物語。アリサの創作は、素材との対話から始まります。
「Alisa Cayooのメインコンセプトはアップサイクルです。ヴィンテージのパーツを集めて、それらを新しいかたちに組み直していく。私はそれぞれの素材に時間や記憶が染み込んでいるように感じるんです。だからこそ、そこにある“物語”を想像しながら作るのが好きで。たとえば、以前住んでいた家の中に、前の住人が残していったメタルピースがありました。それを見つけたとき、“このパーツ、何のために使われていたんだろう”ってすごく気になって。その背景に想いを巡らせながら、ジュエリーに仕立てました。」
「最近は、3Dアーティストのmosol (@notmosol)とのコラボレーションにも取り組みました。アップサイクルの素材とデジタル技術を組み合わせることで、いままでにないアプローチができるようになったし、自分自身にも新しい発見があって、すごく刺激を受けています。」

コラボレーションと並行してアリサが目下取り組んでいるのは、ヴィンテージのボタンを再構築したアイテム制作。イチオシのボタンベルトを見せてくれました。
韓国アイドルの着用がきっかけに。アジアから広がる反響
Alisa CayooのジュエリーはBABYMONSTERやNEWJEANSのメンバーが着用したことで、アジアでの注目度が一気に高まりました。
「ある日、BABYMONSTERのファンの方が『アサが付けている、このネックレスってあなたのブランドですか?』と写真を送ってきてくれて。それで慌ててチェックしたら、本当に私の作品で・・・! 全然知らなかったので、すごくびっくりしました。どうやら、彼女のスタイリストさんがオンラインでAlisa Cayooを見つけて、個人的に購入してくれたみたいなんです。」
この出来事をきっかけに、アジアからの反響が一気に加速します。
「最近は、日本や韓国のショップからメッセージをいただくことが増えてきました。本当にいろんなつながりがあるんだなって実感しています。自分の知らないところで、作品が旅をしている感じがして、本当にうれしいです。」

BABYMONSTERのアサがワールドツアー『Hello Monsters』のなかで着用していた、Virgoネックレス。(画像提供:Alisa Cayoo)
今後の展望
「今後は、アジアを含めたより広い範囲のマーケットにもアプローチしていきたいと思っています。日本のカルチャーにもとても興味があります!ヴィンテージへのこだわりや、物語を大切にする文化は私のブランドと親和性があると感じています。」
ユニークなコンセプトと偶然の出会いから生まれたAlisa Cayooのジュエリー。その魅力は、世界中の人々の記憶や感情をつなぐ力にあるのかもしれません。
【ブランド情報】Alisa Cayoo
Instagram:https://www.instagram.com/pompeznaya_ebuchka/
日本国内のAlisa Cayoo取扱ストア
C.O.M.P :https://www.instagram.com/_c_o_m_p_
BLEND MARKET:https://www.instagram.com/blend_market_
Photographer / Senior Writer:Yuko.K