1.「25名の作家が手がける、LOEWEのティーポットコレクション」
ミラノデザインウィーク2日目。長時間待つのを避けるべく、少し早起きして9時30分にはミラノのブレラに到着。
お目当ては、昨日泣く泣く諦めたLOEWEの展示。オープンは10時からのはずなのに、すでに会場の前には長蛇の列! さすがの人気ぶりに、期待もどんどん高まります。

LOEWE|TEAPOTS
約30分並んで、ようやく中へ。まず最初に目に飛び込んできたのは、天井に広がる素敵なシーリングデザイン。そして、階段を下ると、いよいよ本命のティーポットたちが待っています!

LOEWE|TEAPOTS
一番最初に目を引いたのは、アニマルモチーフが可愛いティーポットカバー。お茶を冷まさないための実用品なのに、ここではまるでファッション小物のような存在感。可愛すぎるデザインに、思わず「これ、欲しい!」とつぶやいてしまったほど(笑)。

LOEWE|TEAPOTS
さらに階段を降りると、そこに広がっていたのは、25名の作家や建築家が手がけた「唯一無二のティーポット」。彫刻のように佇むポットたちは、それぞれにお茶文化へのオマージュと、作者の哲学が込められていて、見惚れてしまうほどの美しさ♡

左からライア・アルケロス、デン・シーピン、崎山隆之の作品
日本からは、6名の作家が参加。国別で最多というから、日本人の感性がいかに世界で評価されているか目の当たりにし、嬉しくなりました。

LOEWE|TEAPOTS
中でも私が惹かれたのは、日本の陶芸家、道川省三さんの作品。ゴツゴツとした存在感に、どこか繊細で不安定な空気が漂っているティーポット。持ち手には黒のレザーが使われていて、意外性のある組み合わせがなんとも言えない美しさ。
このコレクションは、ここでしか見られない、そして購入もできないという、とっても貴重なもの。アートとしてのティーポット、という新しい視点をくれた展示に、じんわりと余韻に浸りながら、次に向かったのはHermès。
2.「Hermèsは光と静けさに包まれる、雲の中のような空間」
LOEWEの展示を堪能した後は、すぐ近くのHermèsへ。
一歩会場に足を踏み入れた瞬間、まるで雲の中に迷い込んだみたいな不思議な空間が広がっていました。
天井から吊るされた白いボックスから、ピンクやグリーン、オレンジといったカラフルな光がふわ〜っと映し出され、それが床に柔らかく広がり、キレイな光輪が描かれた空間は、まさに、宙に浮いているような感覚に。

Hermès|Milano design Week 2025
この広々とした空間には、新作のテーブルウェアやガラスで作られた花瓶、水差しなどがボックスごとに飾られていて、それぞれが持つ透明感、質感、色の重なりの美しさに魅せられた展示でした。

Hermès|Milano design Week 2025
特に、トマス・アロンソによるサイドテーブル「Pivot d’Hermès」は超絶印象的でした。杉の天板と色彩豊かなガラスベースがすごく美しく調和。「軸があえて中心からずれていて、回転したときに生まれる違和感も面白いんです」とスタッフの方が教えてくれました。

Hermès|Milano design Week 2025
こちらは、カラーガラスを重ねてつくられたガラスのジャグ。吹いたり、つまんだり、切ったり、いろんな職人技が詰まっていて、特に持ち手はすべて手作業で仕上げられているそう。見た目の美しさはもちろん、水を注ぐときに生まれる光の屈折も美しいとのこと。

Hermès|Milano design Week 2025
カットワークが美しいガラスのベースにも注目。透明ガラスに色ガラスを重ねて、そこから模様を削り出す「ケーシング」という技法が使われているんだとか。見る角度によって色の濃淡が変わって、奥行きのある不思議な表情を見せてくれるのも素敵でした。
3.「MUJIが提案する、シンプルで美しい暮らし」
次に向かったのは、日本が誇るシンプルで機能的なブランド、MUJI。

MUJI|MUJI MUJI 5.5
会場は、都会のど真ん中にひっそりと佇むピッパ・バッカ庭園。鮮やかなグリーンに囲まれた、静かな雰囲気の中に建てられたのは「Manifesto House」。まるで都会の中の隠れ家のよう。この小屋は、フランスのデザインスタジオ Studio 5.5とのコラボレーション。

MUJI|MUJI MUJI 5.5
この「Manifesto House」は、本当に必要なものだけで生きる、そんなMUJIらしいシンプルな暮らしのあり方を、ぐっと身近に感じさせてくれました。家の中に展示されていたのは、すべてMUJIの既存プロダクトを再構成していて、新しく「作る」ではなく、今あるものを「工夫する」ことで、美しく機能的な空間が生まれているのが印象的。

MUJI|MUJI MUJI 5.5
日本の美意識がこんな形で世界のデザインシーンでもちゃんと語られているのを見ると、なんだか誇らしい気持ちに。賑やかな街の中で、ふと足を止めて深呼吸したくなるような、心が休まる豊かな空間でした。
4.「ペリアンの名作が蘇る、静けさと気品が漂うサンローラン」
次に向かったのは、サンローランが手掛けたシャルロット・ペリアンとのエクスクルーシブなコラボレーション展。フランスの建築家ペリアンの名作家具が、サンローランの美意識で再現された特別な展示です。

SAINT LAURENT|CHARLOTTE PERRIAND
会場は、パディリオーネ・ヴィスコンティという広々としたインダストリアル空間。鉄骨が剥き出しの無機質な空間は、足を踏み入れた瞬間に、どこかワクワクするような、ドキッとする感覚が湧き上がりました。

SAINT LAURENT|CHARLOTTE PERRIAND
まず目を引いたのが、ペリアンが1962年にデザインした「リオ・デ・ジャネイロの本棚」。書籍だけでなく、美術品も飾れるように設計されたこの本棚。ペリアンの夫、ジャック・マルタンのために作られ、なんと過去25年間でたった3回しか展示されていないとっても貴重なもの。

SAINT LAURENT|CHARLOTTE PERRIAND
次に、圧倒的な存在感を放っていたのが、「パリ日本大使公邸のソファ」。1966年に建てられたパリの日本大使公邸。建築は坂倉準三、内装と家具はペリアンが担当。彼女がデザインしたのは、両端がクイッと上がった全長7m超えの5人掛けソファ。これは、在パリ日本大使館の協力を得て、数量限定で復刻されることになったそうです。
どの作品も、静けさと気品が漂い、まさにサンローランらしい美意識が細部にまで宿っている印象でした。そして、これらの作品を見られるだけでもなんて贅沢なんだろうと、喜びを噛み締めました。
5.「IKEAはサステナブルなデザインと遊び心」
最後に向かったのは、北欧デザインでおなじみのIKEA。今回は「Democratic Design」をテーマに、サステナビリティと遊び心を感じさせる展示が盛りだくさんでした。

会場は、FOOD、NATURE、PLAYの3つのエリアに分かれ、レストランを併設。新作コレクションや、さまざまなワークショップ、ジャズの生演奏など、子供から大人まで楽しめる空間に。

中央に置かれた長テーブルには、プロジェクションマッピングが投影され、手の動きに反応してインタラクティブに映像が変化するインスタレーションを展開。食事をしたり、ゲームを楽しんだり、ゆっくり過ごしたり、気軽に立ち寄れる心地よい空間でした。
お目当ての展示を見終わったところで、ミラノの中心地へと戻り、休憩。
立ち寄ったのは、4月にイタリアに初上陸した「CAFÉ KITSUNÉ」。

私は、キャロットケーキ(€4)とカプチーノ(€3.5)をオーダー。甘さ控えめなキャロットケーキをペロリと完食し、エネルギー補給完了です。
この後、アートを見ながら少し街歩きをし、ミラノデザインウィーク2日目が終了しました。
LOEWE、Hermès、SAINTLAURENTでは、時を超えて語り継がれる「美しさ」に触れ、MUJI、IKEAでは、サステナブルな暮らしを身近に体感。感性がビリビリ刺激されっぱなしの、濃密な1日でした。
ミラノデザインウィークに参加して
街全体がアートに染まる中、2日間かけて様々なブランドの展示を巡りました。1日目にはISSEY MIYAKE、GUCCIなどのデザインやインスタレーションに触れ、アートとデザインが融合した世界を体感。特にMarimekkoの夢のようなベッドタイムのインスタレーションが印象に残りました。2日目にはLOEWE、SAINT LAURENTといったブランドを通じて、時代を超えて語り継がれる美しさや、MUJIやIKEAでのサステナブルな暮らしについて考えさせられるひとときを過ごしました。それぞれのブランドやデザイナーが提案する新しい価値観に触れることで、日常生活の中で見逃していた小さな気づきがたくさんあったように感じます。そして、このイベントの魅力は、誰もが気軽に参加し、アートとデザインに触れられること。ミラノの街がまるで美術館のようになり、感性が刺激されることはもちろん、アイデアや考え方を家族や友人、恋人とシェアできる貴重な体験でした。
Photographer & Senior Writer:Aco.H