聞こえづらさや体力の衰えなど、年齢を重ねると若い頃と同じように働くのが難しくなることもあります。しかし、中にはそれを都合よく利用して仕事をサボろうとする人もいるようで……今回は、私のお客様のエピソードをご紹介します。

早朝パートの保育士

私の勤務する保育園には、早朝保育を担当する60代のパート保育士A先生がいます。彼女はことあるごとに「重い物は持てない」「耳が聞こえづらい」と言い、業務を避けることが少なくありませんでした。

名前を呼んでも返事がなく、お願いした仕事にも気づかないふり。聞こえていないのだから仕方ないと言われればそれまでですが、都合よく聞こえなくなっているように見える場面が多々あるA先生。職員の間では、少し扱いづらい存在になっていたのです。

違和感を覚えた瞬間

そんなある日のこと。園児の一人が少し高い場所から飛び降りようとしていたのです。私は思わず「A先生! 〇〇君危ない!」と声を上げました。

すると、A先生がすぐに反応。園児を抱きかかえながら「危ないよー」と優しく声をかけたのです。もちろん私が普段より大きな声を出したのは事実です。しかし叫んだわけではありません。「あれ? 聞こえているのでは?」と、私はその日を境に、少しずつそう思うようになったのです。

疑念と確信

そんな疑念を抱いていたある日、私は同僚と小声で雑談をしていました。「えっ、あの子のママとあの子のパパ、結婚してるんですか?」子どもたちの作り話だと分かっていていましたが、可愛さのあまり、同僚に話していたのです。

すると離れた場所にいたA先生が突然こちらを向き「え! どの子のママとパパだって?!」と興味津々。「聞こえているな」私も同僚も思わず顔を見合わせました。

普段は何度呼んでも反応しないのに、興味のある話題にはしっかり参加してくるA先生。その様子を見て、これまでの違和感が確信に変わった瞬間でした。

聞こえる話、聞こえない話

そこで私は笑顔でこう伝えました。「A先生、お耳が良いんですね! これからは、A先生のお名前を呼ばせていただいたら、ご対応をお願いしますね!」するとA先生は慌てながら「補聴器を忘れることがあるの!」と苦し紛れの言い訳。

それ以来、A先生の仕事ぶりが劇的に変わったわけではありません。それでも以前のように露骨な“聞こえないふり”は減ってきています。そして何より印象に残ったのは、園児が危険な状況にあったときの素早い対応でした。楽をするための言い訳やごまかしはあったとしても、子どもを守るべき場面では即座に動いたA先生。その姿から、保育士としての誇りまでは失っていないのだと感じています。

人は楽をするために都合よく嘘をついていても、肝心なところでボロが出てしまうもの。どんなに要領よく立ち回ろうとしても、日頃の不誠実さは思わぬところで露呈してしまうのだと感じたエピソードです。

【体験者:30代・女性保育士、回答時期:2026年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多様な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。

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