「カスハラ」という言葉が世の中に浸透した今、接客業の現場には様々なお客様がご来店されます。暴言を浴びせてくる人、無理な値下げを要求してくる人、中にはその両方を繰り出す人も……今回はネイルサロンを経営する、私のお客様のエピソードをご紹介します。

穏やかな飛び込み客

私は小さなネイルサロンを経営しています。スタッフやお客様に支えられながら日々働いています。ある日、40代くらいの女性が予約なしでご来店。たまたま空きがあったため、私が担当することに。

飛び込みのお客様は急いでいるケースも多いのですが、その方は「突然来てしまってすみません。急いでいないので大丈夫です」と、とても物腰の柔らかい様子でした。

持ち込みデザインではなく、当店で用意している定額デザインの中から一つを選択。施術中も終始和やかで、世間話を交えながら楽しく時間が過ぎていきました。

豹変した態度

ところが、お会計のタイミングでお客様の態度は一変。「このデザインって、誰かのパクリですよね?」突然そう言われたのです。

さらに「実は私もネイリストなんです。SNSに自分の作品を投稿しているんですが、それと酷似しています。盗作なら犯罪ですよね? そんなものにお金は払えません」と続けました。もちろん当店の定額デザインは、私やスタッフが考案しているもの。

そこで私はスタッフ全員を呼び、「このデザインを誰かから盗用した人はいる?」と確認しました。もちろん全員が否定。するとお客様は「これが私のアカウントです!」と、自身のインスタグラムを見せてきたのです。

インスタの内容とは

そのとき、一人のスタッフがスマートフォンを見ながら口を開きました。「これ、鍵アカですよね?」確かにその通りでした。さらにプロフィールには「身内のみフォロー」と明記されています。「それでしたら私たちは投稿を見られませんよね」その一言で、少し勢いの収まったお客様。

私が「ちなみに、どの投稿が似ているのでしょうか」と問うと、見せられたのは、秋らしいツイード柄やレオパード柄を取り入れたネイルデザイン。もちろん季節感が似ることはあります。しかし、盗作や酷似と呼べるほどの内容ではありませんでした。

私は「秋の定番デザインは似た雰囲気になることがあります。ただ、鍵アカウントで誰もフォローされていない以上、スタッフが盗作することは物理的に不可能です。この状況で無料対応は致しかねます」と伝えました。

それでも値引きを諦めない

「正当な代金をお支払いいただけない場合は、誠に不本意ですが警察に通報せざるを得ませんが、どうなさいますか?」と続けると、「払うわよ! 二度と来ないから!」と怒鳴り散らすお客様。そう言いながら、予約限定の初回クーポンを提示してきたのです。

私が「こちらはネット予約の方のみクーポンです」と説明すると、次は「口コミで500円引きのやつを使うから!」と言い出します。しかしそれは次回来店時に利用できるクーポン。その旨を説明すると「分かりづらい店! いったいいくら払えばいいのよ!!」と物凄い剣幕で怒鳴るお客様。

それでも私は淡々と正規料金をお伝えし、最終的にはお支払いいただいてお帰りになりました。今振り返ると、最初から支払いを少しでも安くする口実を探していたのかもしれません。

接客業をしていると、あの手この手で値引きを迫る人に出会うことがあります。そんなときこそ感情的にならず、事実とルールに基づいて対応することが大切。理不尽なクレームには、毅然とした姿勢こそが最も効果的なのかもしれません。

【体験者:30代・女性自営業、回答時期:2026年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多様な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。

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