義母が隠し続けた引き出し
義母が亡くなって半年。夫と義実家の遺品整理を始めました。義母は生前、寝室の古い机について「私が死んでも絶対に開けないで」と何度も話していました。夫は「大事なものでも入っているんだろう」と気にしていませんでしたが、引き出しには鍵がかかっています。
整理中にタンスの奥から小さな鍵を見つけ、貴重品の確認も兼ねて開けることに。ところが、中にあったのは何十枚もの写真でした。すべて同じ女性が写っていて、顔だけが黒いペンで塗りつぶされていたのです。
写真の裏に書かれた恐ろしい言葉
恐る恐る写真を裏返すと、「許さない」「忘れない」という言葉と日付が書かれていました。20年以上前の写真もあり、背筋が寒くなりました。さらに古い日記には「あの女さえいなければ」「絶対に幸せにはさせない」と、恨みの言葉が何ページも続いていたのです。
夫も女性の正体を知らず、近所に長く住む方を訪ねました。写真を見せると、その女性は顔色を変え、「昔、お義父さんと親しかった人よ。でも、ずいぶん前に亡くなったはず……」と声を落としました。
亡くなった女性への消えない執着
近所の女性によると、義父が若いころ、その女性と交際していたという噂があったそうです。義母は結婚後も相手を許せなかったのかもしれません。帰宅して日記を読み進めると、さらに不気味な記述を見つけました。
女性が亡くなった日付より後にも「今日もあの女を見た」「まだ私を笑っている」と書かれていたのです。そして最後のページには「あの女はまだ家の中にいる。だから写真を捨てられない」とありました。
夫は「母さん、ずっと苦しかったのかな」とつぶやきましたが、私は何も答えられませんでした。
最後に見つかった1枚の写真
翌日、写真と日記を箱に収めていると、机の奥からもう1枚の写真が出てきました。若い義父と義母が笑顔で並ぶ結婚写真です。裏には「この人と幸せになりたかった。ただ、それだけだった」と義母の字で書かれていました。
胸が締め付けられました。恐ろしい言葉を残した義母も、最初はただ愛されたいと願っていたのでしょうか。夫は「もう誰かを恨み続けなくていいと思う」と静かに話しました。遺品整理を終えた今も、私はあの黒く塗りつぶされた顔を忘れられません。
何十年も消えなかった嫉妬と執着。幽霊が現れなくても、人の心に残り続ける恨みには、背筋が寒くなるような怖さがあります。
【体験者:40代・専業主婦、回答時期:2026年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。

