キャンプなら俺に任せろ!
夫は交際中から「学生時代は毎週キャンプに行っていた」「火起こしなら目をつぶってもできる」と豪語していました。自宅には高価なテントや寝袋、調理器具がずらり。友人にも「キャンプのことなら何でも聞いて」と得意げに話していたほどです。
結婚2年目の秋、私が「せっかくだから、今度一緒にキャンプに行こうよ」と提案すると、夫は一瞬黙ってから「お、おう! 俺が全部準備するから任せとけ!」と快諾。当日も新品同様の道具を車に積み込み、「今日は最高のキャンプ飯を食わせてやる!」と張り切っていました。
あれ? 先月も……
ところがキャンプ場に着くと、夫はテントの説明書とにらめっこ。ポールを逆向きに差し込むなど、1時間たっても設営できません。私が「手伝おうか?」と声をかけても、「久しぶりだから勘が鈍っただけ!」の一点張り。
ようやくテントが立ったと思えば、今度は炭に火がつかず、「今日は湿気が多いから火がつかないんだ」と言い始めました。見かねて私が管理人さんに相談すると、夫の顔を見た管理人さんが「あれ? 先月もいらっしゃいましたよね。あのときもテントの設営をお手伝いしましたけど」と一言。
私は「先月?」と夫の顔を見ました。
毎週見ていたものの正体
管理人さんが立ち去った後、「先月も来たの? 誰と?」と尋ねると、夫は観念したようにうつむきました。実は、キャンプ経験はほぼゼロ。私が旅行や自然の中で過ごすことが好きだと知り、交際中に話を合わせたくてアウトドア好きを装ったそうです。結婚後も本当のことを言い出せず、先月こっそり1人で練習に来たものの、テントすら立てられず管理人さんに助けてもらったとのこと。
家にある高価な道具も、ほとんどが見栄を張って購入した未使用品でした。私が「毎週キャンプしていたって話も嘘?」と聞くと、夫は小さな声で「……毎週、キャンプ動画は見ていた」と白状。「そこは動画かい!」と思わず突っ込んでしまいました。
初心者夫婦のキャンプがスタート
私は「キャンプ初心者なのは全然いい。でも、できないことまでできるって言われたら、私だって困るよ」と伝えました。夫も「かっこいいところを見せたくて、引っ込みがつかなくなった。本当にごめん」と素直に謝罪。
その後は2人で管理人さんから火起こしのコツを教わり、なんとか夕食のカレーを完成させました。少し焦げていましたが、夫は「今まで食べたキャンプ飯で一番うまい!」と満面の笑み。そこで「そもそも、キャンプ飯を食べたことあるの?」と聞くと、「……今日が初めてです」と即答し、2人で大笑いしました。
それ以来、夫は知ったかぶりをやめ、休日には2人でキャンプの練習をしています。今では「初心者キャンパー歴2年!」と堂々と自己紹介する夫。あの日に秘密がバレたことで、かえって夫婦共通の趣味ができました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。

