シャンプー後のサービス
私は美容師として働いています。私の店では、シャンプーのあとに肩や頭皮を軽くマッサージするサービスがあります。あくまで無料で行っているちょっとしたもので、本格的な施術ではありません。
最近、私が続けて担当していた常連客の原野さん(仮名)にも、いつものようにシャンプーを終えたあと、軽くマッサージをしていました。すると、この日はいつもと少し様子が違ったのです。
次々と細かな注文が
マッサージを始めると、原野さんから「もうちょっと強めでお願い」と言われました。さらに「肩じゃなくて、首のところ!」「そこ、もう少し長めにやってくれる?」と、次々に注文されます。
私は(美容室のサービスなんだけどなぁ……)と思いつつも、できる範囲で対応することに。しかし、原野さんにとっては思い通りではなかったようです。終わったあともどこか不満そうな様子でした。少し気になりながらも、私はそのまま施術を終えて会計へ向かいました。
帰り際、店長にまさかの
すると会計の際、原野さんが近くにいた店長に「ちょっと」と声をかけました。そして「この子のマッサージ、あんまりなのよね〜……」と言い出したのです。「力も弱いし、言ったところもちゃんと揉んでくれなくて。もう少し練習させたほうがいいんじゃない?」と不満を伝えています。
すぐそばで聞いていた私は、(無料のサービスなのに……)と複雑な気持ちに。すると店長は「なるほど……」と少し考えたあと、にっこり笑って口を開きました。「本格的なものをご希望でしたら、うちのスタッフを鍛えるより、マッサージ屋さんをご紹介したほうが早そうですね!」
店長の機転に助けられた
さらに店長は、「うちは髪のプロなんですが、肩までプロにすると料金が増えちゃいますので(笑)」と続けます。その言葉に原野さんは「……まあ、そうよね」と苦笑い。それ以上不満を口にすることなく、そのまま帰っていきました。
ちょっとした心遣いとしてのサービスですが、本格的なマッサージと同じように求められてしまうと困ってしまうもの。お客さんの要求を真正面から否定せず、ユーモアたっぷりに伝えながらも、きちんと線引きしてくれた店長の切り返しに助けられた出来事でした。
【体験者:20代・女性美容師、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

