同僚と出産の話に
私は2歳の息子を育てており、帝王切開で出産した経験があります。ある日の仕事の昼休み。最近出産を終えて職場復帰した同僚の優香さん(仮名)と、子どもの年齢が近いことから出産の話になりました。
すると優香さんが、「実は私、帝王切開になっちゃったんですよ〜……」と少し暗い表情で話します。私も同じだったため、「あ、私もだよ〜!」と何気なく返しました。
思いもしなかった「申し訳ない」
すると優香さんは、「下から産んであげられなくて、なんか申し訳なくて……」とぽつり。さらに「帝王切開になってごめんねって思っちゃいません?」と、私に同意を求めてきたのです。
出産に対する思いや理想は人それぞれだと思います。ただ、私は出産方法に優劣があるとは考えていませんでした。「申し訳ない」と言われると、(私も息子にそんなふうに思うべきなのかなぁ……)となんだかモヤモヤ。咄嗟にどう返せばいいのかわからず、私は言葉に詰まってしまいました。
そばで聞いていた上司が……
そのとき、近くで話を聞いていた上司の真弓さん(仮名)が、「私、帝王切開で生まれたらしいんだよね〜」と話し始めました。そして……「でも当然、私には生まれたときの記憶なんてないし、『下から産んでほしかった』なんて思ったこと一回もないよ〜(笑)」と、あっけらかんと言ったのです。
さらに「むしろお母さんにずっと『ごめんね』って気にされてたら、そっちのほうが『え、何が!?』って困っちゃうかも」と笑っています。
思いがけない言葉に
真弓さんは最後に、「無事に生まれて元気なら、それで十分じゃない?」と明るく言ってくれました。その言葉を聞いた優香さんも、「たしかに……子どもからしたらそうかもしれませんね」と、少し表情が和らぎます。
自分なりに思い描いていた出産。それが理想とは違う結果になると、複雑な気持ちを抱くこともあるかもしれません。それでも、帝王切開で生まれた本人だからこそ言える真弓さんの明るい言葉には、何より説得力がありました。「何も申し訳なく思わなくていい」と背中を押してもらえたようで、私も気持ちが軽くなった出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

