父と一緒に来局した子
私の職場の調剤薬局は医療モールの中にあるため、常に老若男女の患者で混んでいます。ある平日の午前、薬局内は座る場所がないくらい混雑していました。そんな中で薬ができるのを待っていた子どもが「まだ呼ばれないの? いつまで待つの?」とぐずり始めてしまいます。
その子は薬局へ定期的に来る患者の雅俊くん(仮名・5歳)。いつもお父さんと一緒に来局しており、今回もお父さんが雅俊くんをなだめていました。
母親の愛情不足で情緒不安定に
すると雅俊くん親子の前に座っていた高齢女性が振り返り、話しかけます。「あら、お父さんと来ているの? 平日に男の人が子どもを連れているなんて珍しいわね」
さらに「母親の愛情不足で、情緒不安定な子どもが増えているってニュースで見たわ。この子も待てない子どもになっているんじゃない? まったく今どきの母親は、子どもを旦那さんに押し付けて何をしているのかしら」
パパは専業主夫だから
女性の言葉を聞き、雅俊くんが答えます。「ママはお仕事していて、パパは毎日家にいるよ。珍しいの?」
そしてお父さんが付け加えるように言いました。「我が家は僕が専業主夫として、主に家事や育児を担当しています。男性の主夫って珍しいですよね、驚かせてしまい、すみません」
固定観念にとらわれないように
そこへ、近くで会話を聞いていた薬局長が語りかけました。「謝ることじゃないですよ。お父さんはいつも雅俊くんの体調変化や体重を把握しているし、薬をちゃんと飲ませてあげています。とても素敵なお父様です」
高齢女性は何も言えず、気まずそう。その後、薬の説明が終わるとそそくさと帰っていきました。雅俊くんの父親からお礼を言われた薬局長は、「当たり前のことを言っただけです。男女差別は良くないですよね」と、特に気にしていない様子。
そんな薬局長の姿を見て、私たち職員も固定観念にとらわれないで患者さんの対応をしようと、改めて思った出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:伊村 えりか
薬剤師歴12年。就業を通じて多くの人生や、悩み、奇跡などに直面し、それらを伝えるべく執筆活動を開始。職場や同世代の女性との会話をもとに、医療現場の裏側から家族の「あるある」まで、多岐にわたるテーマで執筆を手がける。子育てサイトのアンバサダーを務め、身近な視点を活かしたコラムを執筆中。

