近年、自治体やさまざまな団体で妊婦体験を取り入れる動きが広がっています。なかには中高生の授業の一環として実施されることも。実際に体験した人はどのような反応を示すのでしょうか。今回は、私のお客様の実体験をご紹介します。
夫の趣味・筋トレ
私は妊娠中に、食べづわりで体重が増えてしまいました。夫は筋トレが趣味で、毎日のように「太りすぎは〇〇(私)にも赤ちゃんにもよくないよ!」とダイエットを強要してきます。
けれども提案されるメニューは妊婦で運動経験のない私には到底難しいものばかり。それでも夫に応えようと必死に頑張っていました。
妊婦体験
ある日、役所主催のマタニティクラスに参加したときのこと。夫は妊婦体験用の重り付きエプロンを装着しましたが、「余裕余裕! 筋トレになるから毎日着たいくらいです」と笑うばかり。
助産師が重りを追加しても「肌トラブル無しでこれだけの負荷をかけられるなんて羨ましい! 僕なんて手足に重りをつけるせいで、すぐにあせもになっちゃうんですよ」と言いながら筋トレを始める始末。
私は呆れながらも、夫が妊婦の大変さを理解してくれる日は来るのだろうかと不安になりました。
計算してみると……
帰宅後、私は夫に「今、骨格筋率何パーセント?」と尋ねました。夫は嬉々として答えます。続けて私は「その筋力割合に合わせて赤ちゃんの重みを計算できる?」と促しました。
夫が計算すると、自分の筋力割合にとってのお腹の重みは想像以上の数値。先ほどの妊婦体験エプロンよりもずっと重い数値だったのです。家にある筋トレ器具や米袋で同じ重さを腹に抱えた夫は「これで24時間過ごすって? 寝返りも打てないじゃないか」と愕然。
さらに私は肌荒れした背中とお腹を見せ、「それだけじゃない。肌トラブルだってあるよ。でもお薬を使えないから我慢するしかないの」と伝えました。
やっと得られた理解
夫は「生まれてから夜泣きで大変だと思っていたけど、生まれる前からこんなに苦しいなんて知らなかった。ごめん」と深く反省。それ以来、筋トレを強要することはなくなり、家事や育児を積極的に手伝うようになりました。
妊婦体験エプロンでは共感できなかった夫でしたが、結果として妊婦体験をきっかけに妊婦の大変さを理解してくれたのです。
妊娠に限らず、あらゆる物事は実際に体験してみなければ本当の大変さを理解することはできません。同じ経験でも人によって感じ方は異なり、完全に分かり合うことは難しいものです。それでも相手の立場に立ち、思いやることが大切だと改めて気づかされました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中

