強い口調の父親
先日、ショッピングモールのフードコートで食事をしていたときのことです。近くのお店で、ある父親が店員に強い口調でクレームを入れていました。「注文と違うんだけど。ちゃんとしてよ」
その声に、周囲の空気が少しピリつき、並んでいた人たちも、なんとなく目線をそらしていました。
店員はすぐに謝り、対応しようとしていましたが、父親の苛立ちはなかなか収まらない様子でした。
大人を黙らせた、子どものまっすぐな一言
そんな中、隣にいた小学校低学年くらいの息子が、静かに父親の服の裾を引っ張り、小さな声で言いました。「お父さん、それさっきごめんねって言われたじゃん」
父親は一瞬言葉に詰まり、息子は店員に向かって「お父さんが、すみません」と頭を下げたのです。
穏やかになった空気
その一言に、その場の空気が少し止まった気がしました。父親は「……まあ、いいか」とだけ言って席へ戻り、店員も「いえ、大丈夫ですよ」と笑顔で返しました。
張りつめていた空気は少しずつ和らぎ、父親もどこか気まずそうに、無言で食事を続けていました。そこに、さっきまでの勢いはもうありません。
年齢と「大人らしさ」
その光景を見ながら、私は思わず考えさせられました。大人だからといって大人らしいとは限らず、子どもだから未熟とも限りません。あの場では、息子のほうがずっと冷静で相手を思いやれる「大人な対応」をしていたように感じた出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:中條みき
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

