「いいわね、旦那さんの稼ぎで遊べて」
「本当に羨ましいわ。私みたいにバリキャリだと、平日の昼間にのんびり家になんていられないもの」 近所に住むママ友の香織さん(仮名)は、顔を合わせるたびに私を「ニート」扱いしてきます。
私はIT企業の人事としてほぼフルリモートで働いており、日中は自宅でPCと向き合う毎日。しかし、彼女の目には「家でダラダラして、内職でもしている暇人」としか映らないようでした。
「いえ、これでも結構忙しいんですよ」と説明しても、彼女は「はいはい、主婦の小遣い稼ぎね。見栄を張らなくても大丈夫よ」と聞く耳を持ちません。自分の価値観だけで他人を決めつける彼女の振る舞いには、呆れるばかりでした。
説明しても届かない、一方的なマウント
その後も彼女は、私が正社員として働いているという話を「強がりはやめなさい。本当にバリバリ働いている人は、そんなに余裕そうには見えないものよ」と鼻で笑って一蹴。彼女にとって「働く」とはスーツでオフィスへ行くこと、という独自の定義があるようでした。
私はそれ以上言い返すのをやめ、彼女との会話は適当に聞き流すことにしました。まさか数ヶ月後、全く別の場所で彼女と再会することになるとは、思いもしませんでした。
採用面接の場に現れた「自称バリキャリ」
ある日、私の勤める会社で中途採用の面接が行われました。応募書類の中に、見覚えのある名前と顔写真を見つけた時は目を疑いました。「……香織さん?」
面接当日、会議室のドアが開くと、そこには「バリキャリ」を自称していた彼女が緊張した面持ちで立っていました。「本日はよろしくお願い……えっ!?」
面接官として座っている私と目が合った瞬間、彼女は椅子から転げ落ちそうになるほど激しく動揺しました。私が「暇つぶし」で働いていると思っていた会社は、彼女が必死に採用を勝ち取ろうとしている、有名なIT企業だったのです。
静かに突きつけた「本当のコミュニケーション力」
面接中、彼女は顔を真っ赤にし、声は震えていました。履歴書の自己PR欄には「コミュニケーション能力に自信あり。周囲と良好な関係を築けます」と自信たっぷりに書かれています。
私はあえて、穏やかな笑顔でこう問いかけました。 「履歴書には自信があるとありますが……私の仕事の説明もまともに聞いてくれず、一方的に決めつけていた方が、うちの会社に合うと思われますか?」彼女は絶句しました。自分がバカにしていた相手に、キャリアの命運を握られている現実。
彼女は最後まで質問に答えられず、その場で辞退を申し出て逃げるように退室しました。以来、道で彼女を見かけても、全力で目を逸らして逃げていくようになりました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。

