私の職場の同僚・彩乃さん(仮名・30代前半)から聞いた義実家でのエピソードをご紹介します。新婚の彩乃さんは、夫の実家に顔を出すたび、義母がマイルールを押し付けてくることに頭を悩ませていました。悪気はないのでしょうが、その細かすぎる指摘に、次第に義実家へ行くのが憂鬱になっていたそうです。
穏やかな義実家に潜む「謎ルール」
夫の実家は、一見どこにでもある穏やかな家庭でした。でも、通い始めて数ヶ月、私は義母のこだわりすぎる「謎ルール」に息が詰まりそうになっていたのです。
「お味噌汁は必ず右側、汁物は手前」「ご飯茶碗は時計回りに置き直して」最初は、その家の作法なのだと一生懸命に合わせました。
でも、洗濯物の取り込み時間から布巾の畳み方まで、少しでも違うと「彩乃さん、これはこうよ」とやんわり指摘が入ります。隣で夫はスマホをいじりながらスルー。私の心は、義実家を訪れるたびにすり減っていきました。
義母の指摘と張り詰めた空気
ある日の食事中のことです。私は喉が渇いていたこともあり、急須から一気に人数分のお茶を注ぎ切りました。すると、それまで和やかに話していた義母の手が止まり、少し強い口調で言ったのです。
「それは違うの。お茶は一度半分だけ注いで、全員分回してから残りを注いでちょうだい。ちゃんと2回に分けて」場の空気がスッと冷えるのが分かりました。「あ、すみません」と小さく謝り、下を向いた私。
その瞬間、ずっと黙って食事をしていた義父が、静かに箸を置きました。
義父の静かな反撃
「それ、いつまで続けるつもりだ」義父の低く響く一言に、義母が戸惑ったような顔をしました。義父は淡々と続けます。「お茶を2回に分けたら何が変わる? 味か? 温度か? ここにいる誰も、その違いなんて分かってないだろ」
さらに、義父の追及は止まりません。「布巾の畳み方だって、誰が決めたんだ? 使いやすければそれでいい。お前だって昔、義母さんに同じこと言われて嫌だったってこぼしていただろう。自分がされて嫌だった負担を、人に強いるのは違うぞ」
義母は絶句し、リビングには沈黙が流れました。いつも見て見ぬふりをしていた夫も、気まずそうにうつむいています。
解き放たれた家のルール
義父は最後に、「やり方はそれぞれでいい。この家のルールは、この家だけで完結させなさい」とだけ言い、また食事に戻りました。
それ以来、義母が細かいルールを口にすることは一切なくなりました。夫も反省したのか、今では「そんなに気にしなくていいよ」とフォローしてくれるように。あのとき、お義父さんが具体的に突っ込んでくれたからこそ救われ、少し肩の力が抜けた気がします。
伝統や習慣を大切にするのは素敵ですが、それが誰かの負担になってしまっては本末転倒なのだと、改めて気づかされました。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2026年4月】
EPライター:佐藤栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。

